交差点で信号が変わるのを待つ。待っていた人は信号の色が変わると一斉に歩き出す。誰よりも早く道路を渡ろうと走り出す子供はかわいい。ランナーだ。かわいいランナーはスタートに厳しく、まだ赤信号なのに渡り始めた人を「フライング」扱いする。フライングした人を何が何でも追い越し一等賞を目指す。

 美人はランナーの心を持っている。子供のころは何度か競走した経験も持つ。さすがに大人になったので一等賞を目指して走り出すことはないが、きちんとスタートする。一斉に歩き出すタイミングにきれいに調和する。そして大人になった彼女が気にするのは「フライング」だけではなく、「出遅れ」だ。

 美人は「前に進む」タイミングに対して忠実である。交差点で動き出す瞬間だけではない。たとえばスーパーのレジや銀行のATMなどで待つ列。人の動きに合わせてタイミングよく前に進む。美人が多い行列は動きがスムーズだ。

 交差点で信号の色が変わったのになぜか動き出さない人がいる。その後ろに立っていたらぶつかりそうになる。「なぜか」なのだ。別に何かしているわけでもないのに、ストップ。ストップさんだ。ストップさんは動きに対して鈍感すぎる。きちんとスタートしよう。そういう人を見てみる。やっぱり「美人のもと」が減ってきていることが多い。

 行列で自分の前が進んでいるのに立ち止まり続けている人も同じだ。立ち止まることが多いので、その人の前にはスペースができる。ストップさんは列にスペースをつくってしまう。行列に不自然なスペースがあるとき、そのスペースの後ろの人を確認するとかなり高い確率で残念だ。スペースのおかげで目立つ。

 たとえば大きな駅の切符売場。同じような列がいくつもある場合。同じように見えても動きに差がある。ストップさんが多いとどうしても動きが悪い。美人はストップさんがつくるスペースを自然と察知している。そういう列を避ける。自然と美人は同じ列に集まる。「美人列」ができる。スムーズな動きの空気をつくる。「美人列」は動きがいいので、結局並ぶ時間が少なくていい。

 いくつかの列を見たとき、美人列を見つけよう。そしてその流れを意識しよう。その流れは「美人のもと」を増やしてくれる。