>>(上)より続く
「人間ATM? マジうけるんだけど」
妻の携帯に届いたメール
「別れ話になったとき、彼女の携帯がどうも憎らしくて仕方がありませんでした。こんなオモチャのせいで、私は大きな借金を背負い、ブラックリストに入り、人生を台無しにされたのです。私は思わず、携帯を掴んで、そのまま壁に放り投げようとしたのです」
たまたまその瞬間、携帯が1通のメールを受信したそうです。嫌がる彼女を制して、受信メールを開封しました。差出人は彼女の友達でしたが、とんでもないことが書かれていたのです。
「人間ATM? マジうけるんだけど」
携帯の場面を見たとたん、大地さんはわなわなと手が振るえだしました。
「おれのことか……」
結局、自分は「金ヅル」であり、「都合のイイ男」でしかなかったのか。妻の実像がそのとき、はっきり分かりました。
たとえ戸籍上、妻という立場にあっても、生活費以外の目的で、夫の口座からお金を引き出したり、カードを切ったりすることは法律上、認められていません。そのことを彼女に伝えたうえで、全額は難しいにしても、借金の一部を彼女に負担させるよう、私は大地さんにアドバイスしました。
しかし、大地さんは私のアドバイスを、行動に移すことができませんでした。妻の異常な物言い、異常な行動を目の当たりにして、心も体も拒否反応を起こしていたからです。彼女のことを思い出すたびに、頭のなかが急激に熱くなり、顔から脂汗が染み出てくる。心にグサっという振動が走り、言葉が出なくなる、話せなくなる…とても、彼女を説得できる状態にはありません。大地さんは彼女が勝手にしでかした借金800万円を、自分で背負うしかありませんでした。
当然、離婚となりました。
大地さんにはもちろん、自己破産をし、借金を帳消しにする選択肢もありました。しかし、自己破産は彼のプライドが許さなかったのです。実生活上の不都合も問題でした。大地さんは妻がつくった借金を踏み倒すことはせず、そのまま全額、返すことに。
私の計算では、完済するまで10年近くかかりそうですが、貯金が上手な彼のことなら、もっと早い時期に完済し、人生の再スタートを切れそうです。
一方で彼女は常識的にも法律的にも、許されない行動を繰り返したにもかかわらず、今回の件では、何の制裁を受けることなく、そのまま野放しにされました。これは獲物に飢えた、獰猛な野獣を、街中に放ったようなものです。次の標的を見つけるため、彼女はお金の臭いがするところへ行ったのではないでしょうか。その後の彼女の人生については、私が知る由もありませんが。
被害額800万円はまだマシなほう
男女問わず「結婚貧乏」は珍しくない
実をいうと、大地さんの件は、「まだマシなほう」です。「被害額」も多いわけではありません。もっとすごい借金を背負わされてしまった「結婚貧乏」の人は、男女を問わず、決して珍しい存在ではないのです。