今年の世界的トレンド
カスタマーセントリック
第85回でお話しした「WORLD MARKETING SUMMIT JAPAN」が、去る10月13~14日の2日間にわたって開催されました。
呼びかけ人のフィリップ・コトラー教授はじめ、世界の第一線で活躍するマーケティング分野の研究者、および、先端を行くマーケティング実践企業の責任者らが多数登壇し、セッションはいずれも大いに盛り上がりを見せました。
それらの中で今年最も大きく取り上げられたテーマは、「カスタマーセントリック」(顧客中心主義)です。
企業がどのような戦略・戦術を実行するかの意思決定の基準は、あくまで「顧客」にあることを本質として、そのためには、「顧客」を正しく理解し、その理解に基づいて、企業は「すべきこと」「しなくてよいこと」の指針を決めるという戦略論、あるいは、それを具体的な施策に落としていく上での実践的な戦術論までを含む場合もあります。
そして、「顧客」を正しく理解するために必要なのが、「マーケティング」に関するスキルであるというわけです。
統合型マーケティング(Integrated Marketing Communications:IMC)の父といわれるドン・シュルツ教授のセッションでも、メインテーマに「カスタマーセントリック」が取り上げられました。
シュルツ教授は、供給が需要を上回ると値下げするしかない、従来の「製品」を起点とするサプライチェーンマーケティングは、もはや機能せずと述べました。
そして今後は、消費者の需要(デマンド)を起点に、これまでとは逆の観点からマーケティングアプローチを行うことが基本で、製品から議論を始めるのではなく、顧客の課題から議論を始めるべきだと強く訴えました。
では、消費者の需要はどうやって創造されるのでしょうか。疑問に思った私は、シュルツ教授に質問しました。
「需要を創るのは誰でしょうか? 果たして企業は需要を創り出せるのでしょうか?」