数回にわたって、最高益を重ねてますます注目を集めるトヨタの現役幹部による最新刊『現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結』から、読みどころを抜粋してお届けします。最初は、本書の冒頭からです。
私は品質管理畑を長く歩みました。その中で、品質とは何かをずっと考えてきました。品質を管理していれば、品質は高まるのかといえば、実はそうではないのです。なぜなら、品質を作っているのは、人だからです。
そして、ひどいものを作ろうと思っている人はいないと私は思います。にもかかわらず、なぜ不良は起きるのか、なぜ失敗は起きるのか。それは、「仕組み」に問題があるからです。長く品質管理の仕事をしていて、私は、そう思うに至りました。そのために、何をすべきなのか。一人ひとりのリーダーは、社員は何をすべきなのか。
私は工場で「仕組み」を変える取り組みを進めました。そしてそこから、高い品質を実現する成功事例がたくさん出てきたのです。
日本中の会社でおかしなことが起きていないでしょうか。日本人は働き者だ、とよく言われます。だから、一生懸命に頑張る。
ところが、一生懸命に頑張っているのに結果が出ない、という人がたくさんいるのです。上司に怒られてしまう。取引先に不満を抱かせてしまう。考えてみれば、それはきわめて理不尽なことではないでしょうか。それこそ、モチベーションも上がらないでしょう。頑張っているのに結果が出ない、ということこそ、実はおかしなことだと私は思うのです。
問題は「仕事の進め方」にある、と私は気づきました。
私は二〇〇四年から、ベルギーにあるヨーロッパの現地法人で社長を務めました。ここで実感したのが、ホワイトカラーの仕事の違いでした。スピード感があった。意思決定が速かった。どんどん変化に対応していた。
日本に戻って、あらためてびっくりしました。旧態依然の根回し、擦り合わせ、調整会議、手直しにやり直し……。たしかに丁寧で品質は高くなっていくかもしれないけれど、このスピード感では海外で負ける、と思いました。
いろいろ調べてみても、日本の大会社でホワイトカラーの生産性を上げることに、真正面から取り組んでいる例はあまりないようです。言葉は本当に申し訳ないですが、みんな根性だけでやっているように見える。でも、はたしてそれで、世界を相手にこれからも戦っていけるのかどうか……。
もう現場の強みだけでは、勝負ができなくなったということです。
では、どう変わればよいのか。
トヨタでは今、新しい取り組みを進めています。トヨタがやろうとしていること、リーダーになる人すべてに理解してもらわないといけないこと。「自工程完結」と社内で呼ばれている取り組みについて、ご紹介したいと思います。