今回の「米ドル安・円高」の局面における対円での米ドル安値は、昨年11月につけた84円台後半です。足元では、その更新を視野に入れた水準での推移が続いています。
ただ、この安値更新は、目先的には難しいのではないかと思っています。
安値更新が難しいと考える理由の1つは、85円という水準に重要な意味がありそうだということです。
為替の適正水準の目安として「購買力平価」という考え方があります。
現在の米ドル/円の「購買力平価(日米生産者物価基準)」は105円程度となっていますので、85円になれば、それを2割も下回ることになってしまいます。
これまでにも「購買力平価」を2割下回るケースはそんなに多かったわけではなく、米ドル/円相場が現在のように自由に変動するようになった1970年代前半以降でも、30年足らずで3~4回程度しかありませんでした。
5年線からのカイ離が2割を
超えたのは過去3回だけ
同じようなことが、5年移動平均線からのカイ離率でも言えます。
現在の5年移動平均線も105円程度に位置していて、米ドルが85円を下回ってくると、5年移動平均線からのカイ離率が2割を超えてくる計算になります。
このような現象はこれまでに、1979年のカーターショック、1987年のプラザ合意、1995年の超円高といった代表的な米ドル暴落局面でしか起こっていません。
米ドルが90円割れの水準で推移する状況が長期化しているために、80円台の表示に「目が慣れる」感じがします。
ただ、これまで見てきたように、85円を完全に超えるような「米ドル安・円高」の意味は、決して小さくありません。
したがって、そういった動きを当局が静観するかとなれば、それは微妙ではないでしょうか?
日本の民主党政権は、発足当初は円高容認の感じがありました。しかし、それは鳩山政権時代にさっそく修正されたと思います。鳩山政権時代に、すでに政権支持率の低下が懸念され始めたためです。
民主党政権は発足当時、それ以前の自民党政権が産業界と親密だったことへのアンチテーゼとして、産業界と一線を画し、家計を重視する政策を行うと見られていました。
家計重視が「子ども手当」となり、アンチ産業界の方針の下で、輸出産業に大企業が多いことを承知の上で、円高が容認されたと考えられます。
しかし、民主党への支持率が低下してきたことから、法人税引き下げを支持し、産業界との関係も微調整に動いたのでしょう。その中で、輸出企業が困る円高を阻止する政策へと軌道修正されたと見られています。
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