ケチな経営者は公私混同を引き起こしがち

 会社経営者が経営上最も慎むべき行為は「公私混同」です。「ケチ」や「いい加減」な経営者ほど、会社のお金を私的に流用する公私混同が目立ちます。

小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 論語に「如有周公之才之美。使驕且吝。其餘不足觀也已。」とあります。孔子が敬愛する周公のような豊かな才能を持つ人物であっても、「おごり」かつ「ケチ」であったなら、何の価値もないという意味で、孔子はそれほどおごりとケチなことを嫌いました。

 舛添要一前東京都知事が辞任に追い込まれた原因もケチでした。政治資金という国民や都民の税金を家族旅行に使い、都民の怒りを買いました。家族旅行の費用くらい自分の財布から出せばいいだけの話なのに、ケチな人は他人の金を使おうとします。

 舛添氏が嫌われた最大の理由は他人の金を自分の金のように使って何も思わないところにあるのに、それを理解できなかったことです。都民の怒りの本質が理解できず、自らが雇った「第三者」に精査を依頼して、道義的には問題があるが違法ではないというお墨付きをもらえば逃げ切れると考えて平然としていたから、知事の座を追われることになったのです。

 経営者も同じです。どんなに良い会社を作っても、社長がケチで公私混同を何とも思わない人物では、従業員はついてきません。

 会社の金で家族旅行をする、会社の金で高級車を買って私的に乗り回す。そんな社長の姿を従業員が見て、頑張る社員などいません。その結果、会社の業績が悪化し、社長の給料が下がり、ますます公私混同に励むという悪循環に見舞われます。

 ある会社の社長は会社の金で高級車を買う、従業員は給料が低くて軽自動車も買えないという状況を当たり前と考えていました。会社はほどなく倒産しましたが、当然の結末といえます。社長の高級車を買うために、軽自動車も買えないような低賃金に甘んじて働く従業員はいません。

 公私混同かどうかの基準は「部下が同じことをやっても許せるかどうか」です。その基準で自分を律するのです。そして、良い会社を作ってたくさん給与を取るのです。良い会社を作れば、給与の高いことに関しては従業員は文句を言いません。