世界標準の教養として、特に欧米で重要視されているのが「ワイン」である。ビジネスや政治において、ワインは単なる飲み物以上の存在となっているのだ。そこで本連載では、『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』の著者であり、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとしても活躍した渡辺順子氏に、「教養としてのワイン」の知識を教えてもらう。

4年もかけて探し出した土地でつくられる
中国産高級ワインとは?

 今、最もホットなワインと言われるのが中国産ワイン「アオユン」です。ファーストヴィンテージが2013年と歴史の浅いアオユンですが、2013年産の6本木箱入りは、さっそく2017年には香港のオークションに出品されています。

 そこでは、アオユンをめぐり中国人バイヤー同士が競り合いを繰り広げ、予想をはるかに超えた約26万円で落札されました。スタッフは皆、その高額落札に驚いていましたが、私は中国人が自国のワインを競り合う姿に驚きました。それまで必死にフランスワインを落札していた人たちがプライドを持って中国産ワインを落札する姿が誇らしげに見えたのです。

 さて、このアオユンは中国の雲南省でつくられています。アオユンはLVMHグループの傘下であり、グループ初の中国産ワインとして2009年にそのビジネスをスタートしました。

 LVMHのスタッフや関係者、専門家たちが広い中国全土をまわり、4年もの年月をかけて見つけた赤ワインに最適な土地は、伝説の理想郷シャングリラの近くでチベット自治区に隣接したヒマラヤ山脈の麓でした。LVMHはその土地を理想のテロワールとしてワイン造りを開始したのです。

 最も高い場所にある畑は標高2600メートルにも及ぶため、移動用の車に酸素ボンベを積んで畑へ向かうなど、その環境は過酷です。また、畑のあるヒマラヤ山脈の麓からシャングリラ市までは4~5時間かかり、長時間かけてワインを運ばなければなりません。このようにとても手間のかかるワインではありますが、アメリカでの販売も好調で、ますます今後の動向から目が離せません。