クリストファー・アックスカイザーキッチンの共同経営者クリストファー・アックス氏。「人材募集で困ったことがない」と語る

「従業員が幸福な会社を作る」を旗印に掲げ、都内一等地への出店を加速させているカイザーキッチン。ミレニアル世代が好む現代的なドイツ料理とドイツビールが売りのカジュアルビアダイニング「SCHMATZ(シュマッツ)」を運営している。創業者は米ニューヨークのベンチャーキャピタルに勤務していたドイツ生まれの若者2人。彼らの下に、続々と人材が集まっていると聞いて取材した。(ライター 曲沼美恵)

人手不足の飲食業界で
15人の募集に100人超の応募

 飲食業界はブラック企業のイメージが強く、募集をかけても人がなかなか集まらないことで知られている。原因として指摘されているのが、「休暇が取得しづらい」「賃金が低い」など労働条件や労働環境の厳しさだ。

 そんななか、カイザーキッチンは「人材募集で困ったことがない」(共同経営者のクリストファー・アックス氏)という。新規出店した際には、15人程度の募集に対して100人を超える応募があった。そのほとんどは口コミで、アルバイトが友人を連れてくることもあるという。

ベンチャーキャピタル出身の
2人のドイツ人がフードトラックから開始

 2018年師走、JR有楽町店とJR新橋駅の高架下にある飲食店街「銀座コリドー街」の一角にある、シュマッツ銀座店を訪れた。1週間後にオープンを控えた店内では、スタッフがその準備に追われていた。

 店は地下1階にある。階段を下りて店に入るとすぐ左手にガラス張りの厨房があり、スタッフがメニューを試作していた。奥のテーブル席では、ホールスタッフが客役と注文を取る役に分かれてロールプレイをしている。そこに、共同創業者でCEOの、クリストファー・アックス氏(31歳)がやってきた。「店に来る時はいつも何を観察しているのですか?」と尋ねると、彼は即座に「(従業員の)スマイル」と答えた。

 カイザーキッチンはアックス氏ともう1人の創業者、マーク・リュッテン氏(27歳)が2013年に立ち上げた会社だ。当初は、交渉の末、約97万円で手に入れたフードトラックを運転しながら、各地で開かれるファーマーズマーケットなどのイベントなどに出店し、好きなドイツ料理とドイツビールを売り歩いていた。

 飲食ビジネスを、なぜ、フードトラックから始めたのか。アックス氏の答えは意外だった。