数多くのテレビ出演や講演、ベストセラー作家としての顔を持つ明治大学教授の齋藤孝先生と、
『ぴったんこカン・カン』『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』『輝く! 日本レコード大賞』など
数々の人気番組の司会者として知られるTBSアナウンサーの安住紳一郎さん。

TBS『新・情報7days ニュースキャスター』で司会者とコメンテーターとして共演しているふたりは、かつて明治大学で先生と生徒の関係だった。
中学校と高校の国語科教員免許を持つ安住アナは当時、明大の教職課程で齋藤孝先生の授業を受けていた。
そんな師弟関係にあり、日本屈指の話し手であるふたりが、『話すチカラ』について縦横無尽に語り尽くす。

“国語科オタク”を自認する安住アナの日本語へのディープなこだわりは必読。
齋藤孝ゼミの現役明大生を前に、安住アナが熱弁をふるった白熱教室の内容も盛り込んでいる。

学生からビジネスパーソン、主婦まで、日ごろの雑談からスピーチ、
プレゼンまで楽しくなる『話すチカラ』が身につく!

安住紳一郎TBSアナウンサーが語る<br />話すチカラが身につく<br />とっておきの方法とは?Photo: Adobe Stock

15秒以内で
短く話す

人の集中力は、いったいどのくらい続くと思いますか?

実は、たった「15秒」程度で集中力は切れてしまうのです。ずいぶん短いですよね。

人が15秒しか集中できないのを踏まえて仕事をしている人たちがいます。それは、「CMプランナー」と呼ばれる人たちです。

CMの多くは15秒でつくられています。短く感じますが、人の生理に照らし合わせると十分な長さといえます。

集中力が切れた人に向かって「この商品、いいですよ」などといくら繰り返しても効果がありません。ですから、視聴者が集中できる時間内に「いいですよ」と簡潔に伝える工夫をしているわけです。

人の集中力は15秒も持たない。このルールから、15秒をすぎて同じ話を続けてはいけないことがわかります。

私が放送で30秒の時間を与えられたときには、15秒が2セットあると考えて話題を展開します。

たとえば、TBS系列で毎年夏に生放送する『音楽の日』という番組を告知するとき。
30秒にわたってダラダラと「○日の土曜日、TBSでは『音楽の日』をお送りします。
7時間ほどの生放送です。ぜひご覧ください……」などと続けると、確実にダレてしまいます。

そこで、前半15秒で「このところ、関東地方では雨が続いていますが」といった天気の話をしてから、後半の15秒で『音楽の日』の告知をする、という具合に構成します。

45秒であれば、「序破急」の3分割。60秒であれば、「起承転結」の4分割。
いずれも15秒単位で話を組み立てるのが理想です。

さて、そうやって話にメリハリをつけても、どうしても時間を持て余すことはあります。

その場合は、話の前か後に「無意味な余白」をつくるというテクニックもあります。
たとえば、ものをゆっくりととり出すのに3秒を使い、残った秒数でとり出したものについて説明する、という具合です。

「言葉に頼りすぎない」というのも大事なポイントです。

私から見ると、みんな日本語に頼りすぎています。
でも、人類の歴史を考えれば、私たちが言葉を獲得したのはつい最近のこと。言葉を使わずに生きていた時代のほうがはるかに長いのです。

あえて言葉を口にしなくても、人は3秒もあれば確実に伝えたいニュアンスを伝えられます。

たとえば、お風呂に浸かって感想をコメントするとしましょう。

「いやー、適温のいい湯加減だ。気持ちいいお湯ですね。本当に1日の疲れがとれますね」

日本語で伝えようとするとこんな感じですが、私たちは同じニュアンスを、日本語を使わず1秒で伝える術を持っているはずです。

そう、「ゔぁ〜〜」という、唸り声ですね。ほとんど意味をなさない言葉ですが、感情はよく伝わります。コトバに頼りすぎず、こういうあまり意味のない言葉や表情でニュアンスを伝えるのも1つの方法なのです。

(次回へ続く)