「一見それほどでもない症状でも、実は放っておくとこわい症状も少なくないのです。最初は気にもとめないわずかな症状が、放っておくと、取り返しがつかない大病になることもあります」。そう話すのは、テレビでも人気の総合内科専門医・秋津壽男氏だ。体からのSOSサインに気づかず、後悔することになってしまった方をこれまでたくさん見てきたという。秋津医師の新刊『放っておくとこわい症状大全~早期発見しないと後悔する病気のサインだけ集めました』は、まさにこうした病気で後悔する人を少しでも減らしたいという想いから生まれたものだ。9月16日に発売となった本書の内容を抜粋するかたちで、日々の健康チェックに役立つ情報を紹介していく。

うつ病や認知症と勘違いされることもある「元気がなくなってしまう病気」とは?Photo: Adobe Stock

別名「治る認知症」。甲状腺機能低下症とは?

 甲状腺の機能が異常に高くなってしまうのがバセドウ病だとすると、その反対に低下してしまうのが甲状腺機能低下症です。「元気ホルモン」である甲状腺ホルモンが低下し、脈拍が上がらず、やたら寒がりになります。

 また、胃腸の働きが落ち、新陳代謝も落ちるため、食欲がないのに太りやすくなるのも特徴です。精神的にも活力が出ず、無気力になってしまいます。

 甲状腺機能低下症は女性に発症者が多く、遺伝的な要因も指摘されています。身内にかかった人がいるようなら、検診項目にぜひ甲状腺ホルモンの検査を加えてください。

 また、それらに該当しない人でも、そもそも年をとるとほかの臓器と同様、甲状腺自体の働きも衰えてきます。そのため、加齢とともに甲状腺機能低下症は増加する傾向にありますが、それを認知症やうつ病と勘違いする方も多いようです。

 活力がなくなってボーッとしてしまうため、「認知症が始まった」「初老期うつや老人性うつになった」と思ってしまうのです。認知症やうつ病の治療をしても症状が改善しなかったのに、甲状腺ホルモンの補充薬を飲んだらものすごく元気になった、というケースもよくあるため、甲状腺機能の低下は、「治る認知症」ともいわれています。

 もし、年をとって、最近なんだか元気が出ない、寒がりになった、食欲が出ない、ボーッとするといった症状が重なる場合は、一度病院で甲状腺機能を検査してみるといいでしょう。

(本原稿は、秋津壽男著『放っておくとこわい症状大全』からの抜粋です)

秋津壽男(あきつ・としお)

秋津医院院長。1954年和歌山県生まれ。1977年大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をし、和歌山県立医科大学医学部に入学。1986年に同大学を卒業後、循環器内科に入局。心臓カテーテル、ドップラー心エコー等を学ぶ。その後、東京労災病院等を経て、1998年に東京都品川区戸越銀座に秋津医院を開業。下町の一次医療を担う総合内科専門医として絶大な支持を集める。現在、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系列)にレギュラー出演中。ベストセラーとなった『長生きするのはどっち?』『がんにならないのはどっち?』シリーズ(あさ出版)ほか、著書多数。新刊『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)が2020年9月16日に発売。