ここ数年、メディアでもよく取り上げられるようになった「大人の発達障害」や「うつ病」。しかし、これらの病気に関する偏ったイメージや誤解がまかり通ってしまい、「自分もそうなのでは?」と専門医の診察を受ける人が増えているのが現状です。そこで前回に続き『最新医学からの検証 うつと発達障害』(青春出版社)から、病気の疑いがある方、ご家族、あるいは職場で当事者と関わりのある方などに向けて、発達障害やうつ病の正しい知識をわかりやすく解説します。
「アスペルガー」と思ったら、うつやADHDの可能性も…
発達障害の専門外来にやってくる人は、多くが自分のことをアスペルガー症候群と考えています。「対人関係がうまくいかないので、自分はアスペルガーではないのか」と自己診断している人や、「他の病院やクリニックでアスペルガー症候群と診断された」という人が大半です。
しかし、ここには大きな誤解があります。それは、「発達障害=アスペルガー症候群」、という誤解です。実は、総人口に占める有病率は、同じ発達障害でも圧倒的に注意欠如多動性障害(ADHD)が多いのです。外来を受診する人の中では、本来はうつやADHDであるのにもかかわらず、自らアスペルガー症候群と確信していたり、そのように診断されていたりすることがよくみられます。