コロナ禍で皆さんの営業は、どのように変化しましたか?「直接面会できない」「商品・サービスを見せられない(伝えられない)」「相手先の会社や個人の雰囲気・空気がつかめない」「直接相手を訪ねていくことで示せていた誠意が伝わらない」など、これまでの方法ではうまくいかず、悩んでいた時期もあるでしょう。しかし、その反面、営業成績が落ちるどころか、伸ばしている人がいることも承知のはず。何が違うのでしょうか。その違いは、すでに7年読み継がれている本書『「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業』で明かされています。そして、オンライン営業のスキルを加えてパワーアップしたのが、『[新版]「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業』。本書よりいつの時代もどんな業種でも結果を残す営業スキルを伝授します。

「なぜ?」「たとえば?」「ということは?」の3つの質問で売上が伸びるPhoto: Adobe Stock

質問は、広げることではなく、深める

 質問のパターンはどのようなものがいいのでしょうか。結論から申し上げましょう。質問は、「なぜ?」「たとえば?」「ということは?」の3つで、基本的には十分です。

 その理由を説明する前に、私の生の体験をお話ししましょう。私は質問が重要だと気がついて、質問優先の面会を意識して営業に出かけるようになりました。ところが質問になれていない私は、どのように質問したらいいかがわかりませんでした。だから、面会では何も考えずに出かけていたわけです。

 ただ、前回のアファーメーションで、お客様に興味・関心を持って面会に臨んだので、質問が決まって出てきました。それが、「なぜ?」「たとえば?」「ということは?」だったのです。これが、次々と会話を展開し、そして、深くする効果があったのです。

 営業の原則の中で、「人の行動原則」のお話をしました。「人は思った通りにしか動かない」でしたね。「すべてはその人の感じていることや思っていることから始まる。そこから考え、決断(行動)する」です。これを図式で表すと、「感じ・思い→考え→行動→結果」となります。

 ですから、感じや思いを質問することが重要なのです。3つの質問はこの感じ・思いを聞くことに抜群に効果があったのです。

 では、3つの質問の効果を具体的にお話ししていきましょう。

◆「なぜ?」の絶大な効果

「なぜ?」は、理由です。行動の理由や原因、動機などが見えてきます。「なぜ」の質問でまず「感じ・思い→考え→行動→結果」の「考え」がわかります。さらにさかのぼって、そのことに対する「感じ・思い」が見えてきます。

「トヨタの『なぜ?』を5回繰り返せ」というのはとても有名です。「なぜ?」を繰り返すことによって、その理由、原因、動機、本質まで見えてきます。「なぜ、そういう行動をされましたか?」と言われると「〇〇のように考えたから」と伝えてくれるようになります。

 そこで、「なぜ、そのように考えましたか?」と聞くと、「このように私は思ったから(感じたから)」などと、その物事に対する感じや思いが出てくるのです。さらに、「なぜ?」と質問すれば、その感じや思うことのとらえ方や見方、受け止め方が出てきます。

 この「なぜ?」という質問によって、その人の感じや思いを知り、ぜひともお役に立ちたいという純粋な動機を高めることができるのです。

◆「たとえば?」の絶大な効果

「たとえば?」は、「具体的には?」ということです。「たとえば、どのような例がありますか?」「具体的にはどのようなことが起こりましたか?」、これらは、具体的な事例を聞く質問です。「感じ・思い→考え→行動→結果」では、行動の部分が多いでしょう。

「そうですね。昨日のことですが……」「ちょうど、1年前のことですが……」と過去のことを思い出し、具体的に起こったことを表現してもらえるようになります。

 この現実を具体的に聞かせてもらうことにより、その行動を知り考えがわかり、その人の気持ちがわかるようになるのです。

 それで、その人の感じ・思いがわかってくるのです。

◆「ということは?」の絶大な効果

 お客様が「なぜ?」で理由を話し、「たとえば?」で具体的事例を話すと、自分自身がその感じや思いを強めます。それらを十分聞いたうえで、「ということは?」と聞くと、「これからどのようにしたいか?」という考えや行動が明確になります。

 過去の話の場合は、「それでどうなりましたか?」と聞くと、同じように、そのときの考えや行動が明確になるのです。

 このような「ということは?」は、「なぜ?」「たとえば?」で考えや行動の理由や動機である思いを聞き、具体的事例を用いたうえでの質問なので、しっかりとした結論となります。お客様がこの質問で答えたものは、お客様の感じ・思いなので、営業マンは、ぜひとも応援したいという純粋な動機が強くなるのです。

 私はこれらの「なぜ?」「たとえば?」「ということは?」の質問を自然に繰り返していました。なぜ繰り返せたかというと、その人に対する興味・関心でした。それは、次のように展開しました。

なぜ、そのようにされたのですか?」(考え)
「自分しか、やる人間はいないからね」
「なるほど。たとえば(具体的には)、どのような営業をされたのですか?」(行動)
「まず、現在の取引先に出向きましたよね」
「なるほど。なぜ、取引先だったのですか?」(考え・思い)
「今、取引先には継続して仕事させてもらっているからね。一番早いと思ってね」
「なるほど。それは、たとえば、どのような仕事だったのですか?」(行動)
「まずは、当社の得意な製造の仕事だよね」
「なるほど。それで、どうなったのですか?」(行動)
「いや、おかげさんでね。その中で助けてくれるところがあってね」
「そうですか。それは、本当によかったですね。ということは、そこからどういうことがわかったのですか?」(思い・考え・行動)
「やっぱり、手を抜いてはいけないということ。取引先は本当にありがたいということだね。それとね、当社も営業力をつけとかないとね」

 つまり、「なぜ?」で考え、「たとえば?」で行動を聞き、「ということは?」で感じ・思いを聞くことは、どんどん、その人の内面に深く入ることなのです。それは、まさしく、その人の思いを知り、考えを知ることです。そのことが、その人の仕事や人生に対する姿勢(価値観・生き方・理想)を知ることになるのです。

 つまり、質問は、広げることではなく、深めることです。余計な質問は使わず、「なぜ?」「たとえば?」「ということは?」で十分なのです。