わたしたちの多くは何らかのストレスを抱えながら生きている。人間関係の悩みや職場でのプレッシャー、将来への不安など心の平穏を脅かす要因は数知れない。
そしていま、SNSの普及に伴う情報過多とコロナ禍によってストレスがさらに増加し、「いつも疲れている」「なんとなくダルい」「集中力が続かない」といった症状が出やすくなっている。
そのような症状の原因は、体の疲労ではなく「脳の疲れ」の可能性がある。脳の疲れは単なる休息だけでは完全に解消することができないため、きちんとした「脳の休め方」を知っておかなければならない。
そこで読んでおきたいのが、2016年に発売されてたちまち話題を呼び、これまでにシリーズ累計28万部を突破しているベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』本書は、イェール大で学び、精神医療の最前線である米国で長年診療してきた精神科医・久賀谷亮氏が、「脳疲労」を解消できる「科学的に正しい」脳の休め方をストーリー形式でまとめた1冊だ。
今回は、いま脳疲労が溜まりやすくなっている原因を解説するとともに、休息法を学ぶ前に知っておきたい脳の仕組みを『世界のエリートがやっている 最高の休息法』より紹介する。(執筆・構成/根本隼)

「なんとなくダルい」「集中力が続かない」という悩みを根本的に解決する最高の休息法とは? Photo:Adobe Stock

人々がメディアに触れる時間は「過去最長」

 現代の日本が「ストレス社会」と呼ばれるようになって久しい。受験や就職活動、社会人生活など人生の様々な局面で競争にさらされ続けるいま、人間関係や仕事の悩み、将来への不安などストレスの要因は数え切れないほど多い。そして、近年はSNSの普及などによる「情報過多」もストレスの原因として見逃せなくなっている。

 いまわたしたちが日常生活の中で触れる情報の量はかつてなく多くなった。博報堂DYメディアパートナーズが今年行なった「メディア定点調査」によると、1日当たりのメディア総接触時間は450.9分(週平均)で、昨年より39.2分伸びて過去最高を記録したという。最も時間が伸びたのは「携帯電話/スマートフォン」で昨年比18.0分増加、次いで「タブレット端末」が同9.7分、「パソコン」が同8.4分増加と続いた。

 初代iPhoneが日本に上陸した2008年のメディア総接触時間は319.3分なので、10数年の間にメディアに接触する時間が2時間以上も増えていることになる。

 また、アメリカの市場調査会社IDCの今年3月の発表によると、昨年に世界全体で生成、もしくは複製されたデータ量は64.2ZBで、2000年の1万倍以上に跳ね上がっている。20年前には想像できなかったほどの勢いで、世界に流通する情報量は増え続けているのだ。

過剰な量の情報が「脳疲労」につながる

 もちろん、より多くの情報へアクセスできるようになることで、生活の利便性が向上するのは事実だ。しかし、あまりにも多くの情報に触れることは人間の脳にとって弊害もある。

 処理能力を超えた過剰な量の情報を脳が受け取ることが習慣化すると、脳全体の働きが鈍ってしまう「脳疲労」の状態に陥り、情報処理機能が低下してしまうからだ。

ストレスを「よく感じる」人はコロナ禍で倍増

 情報過多な世の中だけでなく、昨年から猛威をふるい続けているコロナ禍によっても、わたしたちはなおさらストレスを溜めがちになっている。

 民間調査会社インテージのアンケート調査によると、現在ストレスを感じている人の割合は58.0%で、このうちストレスを「よく感じる」と回答した人は22.6%で2年前と比べておよそ2倍になったという。コロナ禍での感染不安や、働き方が変動したり、行動の自粛を余儀なくされたりしたことで、高ストレスな生活環境になっていることが分かる。