私たちの多くは何らかのストレスを抱え、「いつも疲れている」「なんとなくダルい」「集中力が続かない」といった症状が出やすくなっている。
そのような症状の原因は、体の疲労ではなく「脳の疲れ」の可能性がある。脳の疲れの場合、ただ休むだけでは完全に解消することができないため、きちんとした「脳の休め方」を知っておかなければならない。
そこで読んでおきたいのが、2016年に発売されてたちまち話題を呼び、これまでにシリーズ累計30万部を突破しているベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』(著:久賀谷亮)だ。そこで今回は、本書より一部を抜粋・編集し、余計なことで悩まない「ストレスに強い脳」のつくり方を紹介する。(構成/根本隼 初出:2021年9月23日)
マインドフルネスは脳の構造そのものを変える
ヨーダ「ここまでの話だけであれば、驚くようなことはないかもしれん。『瞑想をすれば心が落ち着く』なんてことは、わざわざ科学が実証せずとも、たいていの人がなんとなく思っとることじゃからな。
それだけでは終わらんところが、マインドフルネスの脳科学の面白いところじゃ。端的に言えば、マインドフルネスは脳の一時的な働き具合だけでなく、脳の構造そのものを変えてしまう」
いよいよ話の核心に近づいてきたようだ。ヨーダがにんまりと笑っている。
雑念にとらわれず疲れづらい脳をつくる
ヨーダ「マインドフルネスの父とも言われるジョン・カバット=ジンの名前は知っておるかな? マサチューセッツ大学のカバット=ジンは、従来の認知療法に瞑想を組み込んだマインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)という独自の方法を構築した人物じゃ。
彼らのグループによる2005年・2011年の研究によれば、MBSRを8週間にわたって実践した人は、大脳皮質(脳の表層の最も進化した部分)の厚みが増していたというデータがある。要するに、脳の機能が高まったということじゃな。
容積の変化だけじゃないぞ。同じくマサチューセッツ大学にいたジャドソン・ブルワーが言うように、脳の各部位のつながりも、マインドフルネスは変化させるんじゃ。経験のある瞑想者では後帯状皮質と背側前帯状皮質あるいは背外側前頭前野の連結が増しておったというからな。
つまり、瞑想を継続的に行うことで、脳の雑念回路(DMN: Default Mode Network)の活動をコントロールできるようになるわけじゃ。となると、誰にでもさまよわない心、疲れづらい脳をつくることは可能じゃと考えられる」
脳が絶えず自らを変化させるということ、いわゆる脳の可塑性については以前から明らかになっている。もしも今後の研究が進めば、マインドフルネスは人間が自分の脳を自由に変化させるための有効な手段になっていくだろう。
疲れをとるだけでなく予防にも効果
マインドフルネスは脳の「働き具合」だけではなく、「つくり」そのものを変えてしまう。つまりこれは、一時的に脳の疲れをとる対症療法ではなく、疲れに対する予防にもなるということだ。ある研究では、ストレスホルモンであるコルチゾールが出にくい状態が観察されていた。マインドフルネスによって、ストレスに強い脳をつくれる可能性が高いということだ。
ヨーダ「ブルワーはニューロフィードバックを取り入れたりもしておるぞ。自分の脳を自分で整え、成長させる時代はすぐそこじゃ」
なんということだろう。ニューロフィードバックというのは、脳内の活動を被験者自身にリアルタイムでフィードバックする方法のことだ。つまり、瞑想によって後帯状皮質などの活動が低下している様子を、被験者(瞑想者)本人に可視化して見せたのだ。これを繰り返していれば、被験者は自分の脳をトレーニングし、理想的な状態にコントロールできるようにすらなるかもしれない。
(本稿は『世界のエリートがやっている 最高の休息法』から一部を抜粋し、編集したものです)