「脳疲労」は単純な休息だけでは解消されない

 これまで見てきたように、「情報過多」な環境とコロナ禍によって、かつてないほどストレスが溜まりやすくなっている。そして、人間の脳にとってストレスが過剰な状態が長期間続くと、ついには脳の働きが低下する「脳疲労」を引き起こしてしまう。

 脳疲労は、筋肉疲労のような体の疲れとは根本的に性質が異なるため、睡眠による休息だけでは完全に回復させることができない。対処せずに放置していると、集中力が低下したり飽きっぽくなったりして勉強や仕事のパフォーマンスが低調になるので、それがストレスとなってさらに脳疲労につながるという負のサイクルを生んでしまう。

大量にエネルギーを消費する脳の活動「DMN」とは?

 その脳疲労を根本的に解消するメソッドを紹介しているのが、2016年に発売されてたちまち爆発的に売れ、現在までにシリーズ累計28万部を突破しているベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』だ。

 本書によると、人間の脳内には、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という回路がある。これは脳が意識的な活動をしていないときにも見られるベースライン活動を司っていると言われている。脳は体重の約2%の重さしか持たないにもかかわらず、体全体が消費するエネルギーの20%を使うが、中でもDMNの消費量は脳の消費エネルギーの60~80%を占めると言われている。

DMNの活動を抑えるのが、グーグルも取り入れた「マインドフルネス」

 つまり、せっかく休養を取ってのんびりと休んでいるつもりでも、DMNが過剰に働いている限りは知らぬ間に脳疲労が溜まっていってしまうので、このDMNの過剰な活動を抑えていかないと本当の休息にはならない、ということだ。

 そして、DMNの活動をコントロールするメソッドこそが、本書で紹介されている「マインドフルネス」だ。マインドフルネスとは、瞑想などを通じた脳の休息法の総称で、過去や未来にとらわれずに現在に意識を向けることでストレスを低減する、いわば「心のトレーニング」だ。アメリカではグーグルやフェイスブック、シスコといった名だたる有名企業が取り入れたことで話題になった。

 第2回以降の連載では、『世界のエリートがやっている 最高の休息法』より、この「マインドフルネス」の効果や具体的な手法を詳しく解説していく。

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