酒を愛し、酒に愛される孤独な女。新卒半年で仕事を辞め、そのままネオ無職を全う中。引っ込み思案で、人見知りを極めているけれど酒がそばにいてくれるから大丈夫。ハイボール、ビール、ストゼロ……たくさんの酒彼氏に囲まれて生きている。食べること、映画や本、そして美味しいお酒に溺れる毎日。そんな酒との生活を文章に綴り、YouTubeにて酒テロ動画を発信している。気付けば、画面越しのたくさんの乾杯仲間たちに囲まれていた。初のエッセイ『無職、ときどきハイボール』を2021年3月10日に刊行。
『無職、ときどきハイボール』プロローグより
無職になったら、有り余るほどの時間ができた。
とりあえず飲みにでも行くかと、数少ない仲間たちに連絡を取ったが、彼らは完全に「仕事」という二文字にとらわれて活気を失い、羽根を伸ばすことは金曜までは許されぬという状態になっていた。あの頃のように、とにかくコスパを追求し、何か面白いことが起きないかと常に酒を構える勢いで消耗する毎日はすでに閉ざされてしまったのだ。
そこからはぽつんと、最初はしんみり孤独に包まれながら一人でお酒を飲んだ。
そして、驚いた。
…お、おいしい……。
お酒の味に全集中して飲んだら、味があることに気付かされた。かなり偏差値低めの発言だが、お酒を味わって飲むことなんてろくになかったから感動したのだ。
そこから面白くなって、緩やかに酒の味を楽しみながら飲むようになった。
「レモンサワーって、メーカーによって酸味がこんなにも異なるのか」
「よくよく飲むと、ウイスキーって種類によって飲みやすさがまったく違うな」
そんなことがわかるようになってきた。
一気に飲んで二日酔いのおまけ付き、ジェットコースター気分を味わうような飲み方から、好きな時間帯から一人で、のほほんとお茶を飲むように、穏やかな気持ちで酒を飲むように変わっていったのだ。
すると、少しずつだけど幸せな気分が押し寄せてきた。それはすごく小さな幸せかもしれないけど、確実に私の人生を楽しく彩ってくれた。この間も箱根へ行ったけど、紅葉を見ながら朝8時に近くのパン屋さんのビーフシチューパンを食べつつ飲んだ黒ラベルは格別においしかったな。
お金はない、友人も少ない、仕事もほとんどない、でも時間はある。そんな世間的には“終わっている”と言われても仕方がない私が、それでも幸せに生きていけているのは酒のおかげだ。
飲み方次第で、酒は人生を楽しく彩ってくれる。この本は、そんな私なりの幸せな飲み方を書いたものだ。これを読んで、少しでも誰かが飲みたいと思ってくれ、ほろ酔いな幸せ気分を共有できるなら、それが何よりうれしいなと思う。
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ここも居酒屋だったのか……! あんなところやこんなところで、ぼっち女がひとり幸せに飲みまくる。なぜか酒が呑みたくなる、腹が減る! 新感覚の酒テロエッセイ。