薬を手にする男性写真はイメージです Photo:PIXTA

高額療養費制度と聞けば、がん患者を支える仕組みだと思う人は多いだろう。だが、関節リウマチなど、高額な薬を長く使い続ける患者にとっても欠かせない制度である。一方、費用を理由に治療を諦めれば、その人は制度の利用統計にも表れない。制度が支える患者と、数字から消える患者の実態を追う。※本稿は、ジャーナリストの西村 章『高額療養費制度』(集英社)の一部を抜粋・編集したものです。

高額療養費制度を使うのは
がん患者ばかりではない

 生きている限り誰しも見舞われる可能性がある「万が一のリスク」に備えるためのセーフティネット、それが高額療養費制度だ。2024年冬に政府が高額療養費制度の〈見直し〉という名目で自己負担上限額を引き上げようとして猛批判を浴びた際に、必ずといっていいほど使用された決まり文句が「がん患者などが利用する」という枕詞だ。その常套句からもわかるとおり、この制度に対する一般的な印象はおそらく、「誰しもがんに罹るリスクがあり、そのときに利用する可能性が高い制度」というものだろう。

 現代は年間100万人ががんに罹患すると言われる時代で、制度に対するそのようなイメージはもちろん間違いではない。だが、この制度を利用しているのは、がん患者に限らない。五十嵐中東京大学特任准教授(当時)が行った統計調査によると、高額療養費制度の利用者が抱えている疾患は多岐にわたる。

図8 高額療養費の利用者・非利用者別疾患分布同書より転載 拡大画像表示