世界投資へのパスポート
2017年5月22日公開(2017年11月30日更新)
バックナンバー 著者・コラム紹介
広瀬 隆雄

トランプのFBI長官解任とウォーターゲート事件で
株式相場へのインパクトを比較しても意味はない?
従来の「トランプ銘柄」の次に来るセクターも紹介!

米国企業の第1四半期決算は、
先週までにほぼ出そろった

 米国における2017年第1四半期の決算発表シーズンが終わりを迎えています。これまでに、95%の企業が決算発表を済ませました。

 EPS成長率は、平均すると+13.9%でした。これは予想9.0%を上回りました。なお、+13.9%というEPS成長率は、2011年第3四半期以来の高い成長率でした。これまでに決算を発表した企業の75%がEPSで予想を上回りました。ハイテク、ヘルスケア、金融セクターで予想を上回る企業が多かったです。

 また、売上高成長率の平均は+7.7%でした。これまでに決算を発表した企業64%が、売上高で予想を上回りました。過去5年の平均は53%なので、それより良かったです。

 このように、今回の決算発表シーズンは普段にも増して好調な企業が多かったです。

トランプ大統領が外遊に出たことで
市場にネガティブな政治ニュースは途切れる?

 一方、政治に目を向けると、先週、トランプ大統領がコミー前FBI長官を解任したことで、大統領に対する批判が高まりました。中には「弾劾すべきだ」という声もありました。弾劾とは、大統領をクビにすることを指します。

 そのような批判の中で、トランプ大統領は中東諸国の歴訪に出かけました。投資家は「外遊している間は、これ以上、ネガティブなニュースは出ないだろう」と、これを歓迎しています。

コミー前FBI長官解任とウォーターゲート事件を
単純に比較しても意味はない

 今回のことを、1970年代初頭に株式相場の大暴落のきっかけとなったウォーターゲート事件と比較するマスコミもあります。たしかに経緯としては似ています。

 しかし、当時のマクロ経済の置かれた状況と現在の状況は、似ても似つかぬものなので、「ウォーターゲート事件の頃の相場と同じ展開になる」と性急に結論付けることは出来ないと思います。

 まず、当時はインフレがどんどん進行していました。突然、エジプトとシリアが示し合せてイスラエルに攻め込み、ヨムキプル戦争(第四次中東戦争)が起きました。第二次世界大戦以来、最大の派手な戦車戦が繰り広げられ、その緒戦でイスラエルは大敗を喫し、アメリカに助けを求めました。

 アラブ社会はアメリカに対し、「イスラエルを支援したら、アメリカにはもう石油を売らない」と警告しました。それにもかかわらずアメリカがイスラエルに対し救援補給をしたため、石油輸出国機構(OPEC)は団結して生産調整に入ったのです。これが「第一次オイルショック」と言われる出来事です。

 アメリカ中のガソリンスタンドには行列ができ、通勤や企業の日常業務に支障が出ました。米国株が下げた理由は、そういう「弱り目に祟り目」のような状況のときにウォーターゲート事件のニュースがもたらされたからです。

 だから、ウォーターゲート事件だけに相場下落の原因を求めることはできません。

トランプ大統領がクビになると
むしろ株式相場は上がる可能性も

 すでに、税制改革や大型インフラストラクチャ投資などの成長プログラムが議会を通過する可能性はずっと小さくなってしまっているので、もう投資家はそれらに余り期待していないと思います。

 幸い、成長戦略が打ち出せないということは景気が強くなりすぎる恐れも無いことを意味し、それは長期金利が今の水準で安定的に推移することを示唆しています。

 連邦準備制度理事会(FRB)は「年内3回利上げする」という約束を守るプレッシャーを感じていましたが、政治が空回りしているので、それに合わせて利上げの必要性もそれほど切実に感じられなくなりました。

 現在の低金利が、もう少し長く続くようなのであれば、それは株式にとって支援材料です。

 さらにうがったみかたをすれば、「トランプ大統領がクビになれば、むしろ株価は上昇する」ことも考えられます。

 つまり1)企業業績が好調で2)金利が低いのであれば、株を売る材料は無いというわけです。

従来の「トランプ銘柄」から
セクター戦略の変更が必要に?

 ただ、税制改革や大型インフラ投資のストーリーが崩れてしまったので、物色の矛先は「トランプ銘柄」とは別の方へ行く可能性があります

 具体的には、今回の決算発表シーズンでも安定的な強さを見せたアルファベット(ティッカーシンボル:GOOGL)フェイスブック(ティッカーシンボル:FB)アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)など、お馴染みの銘柄に買いが集中するという展開も十分に考えられます。

 唯一の懸念点としては、テクノロジー株は既にS&P500指数の23%を占めており(下のチャートの赤い部分)、1990年以降の平均値である16.6%より遥かに比重が高くなっていることでしょう。

 もちろん、ただ「S&P500に占める比重がドットコム・バブルの2000年当時を除いて今が一番高くなってしまっている」という理由だけで、このセクターを「売り」と判断することはできないと思います。

 しかし歴史を振り返ってみると、リーマンショックの直前の金融セクター(=ピークでは23%でした)がそうだったように、余りに突出したセクターは、その後、訂正が入りやすいことが知られているので、投資家は注意が必要です。

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