製薬業界4強の一角、第一三共がジェネリック医薬品大手、インドのランバクシー・ラボラトリーズの買収を決めた。先進国を中心とした画期的な新薬開発に軸足を置いてきた海外戦略を修正し、新興国市場への進出、安価な医薬品の提供をも視野に入れた「複眼経営」に乗り出す構えだ。米ファイザー、英グラクソ・スミスクラインらメガファーマが買収合戦に参戦するとの観測も浮上するなか、第一三共はどう動くのか、庄田隆社長を直撃した。(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 佐藤寛久)

庄田隆社長
しょうだ・たかし/石川県生まれ、60歳。1972年東京大学薬学部を卒業し、旧三共(現第一三共)入社。2000年海外業務部長、01年取締役、02年常務を経て、03年社長。05年第一三共社長に就任。08年5月より日本製薬工業協会会長を兼務。(撮影:宇佐見利明)

――日本の大手製薬会社はこぞって、バイオベンチャーなど新薬開発を手がける企業を買収している。それに対してなぜ、インドのジェネリック(後発医薬品)メーカーのランバクシー・ラボラトリーズを買収するのか。

 製品の特許が切れれば、崖を転げ落ちるように売り上げを失ってしまう。その前に新薬を継続的に出すのが使命だが、それはたやすいことではない。われわれはOTC(薬局で販売される医薬品)事業も手がけているが、国内限定で、基本的にはハイリスク・ハイリターンの新薬開発型の企業だ。

 一方、ランバクシーは、特許が切れたロングセラー製品を販売している企業だ。新薬よりリターンで少し見劣りするが、一緒になることで、安定した収益基盤になる。

――ハイリスク・ハイリターンの既存のビジネスモデルでは、立ち行かなくなると見たのか。

 製薬会社のビジネスモデルは、時代によって変わってくる。今のブロックバスター(1000億円以上の売上高を持つ大型医薬品)に依存してどんどん成長していく欧米のメガファーマのビジネスモデルは、1990年代後半から2000年代の前半に確立された。だが、最近は特許切れに伴って、各社が人員のリストラを始めるなど、限界も見えてきた。同じビジネスモデルを追いかけるのではなく、自らつくりたいと考えている。

新興国で第一三共に勝る
ランバクシーの活力

――新薬メーカーがジェネリック医薬品を手がけるという意味では、ノバルティスファーマ(スイス)と似ている。

 確かに近い部分もあるが、ノバルティスのジェネリック事業は欧州の先進国を本拠地とした事業。われわれの場合、新興国を本拠地とした事業という点で、異なる特徴がある。