【中居トラブル】元文春編集長が、後輩たちの「誤報」とフジテレビの「出直し会見」に言いたいこと誤報が発覚した文春に対して「あらゆる選択肢が検討のもとにはある」と語るフジテレビの清水賢治新社長 Photo:JIJI

小さく報じるべきではなかった
文春「誤報」はなぜ起きたのか

 1月27日に行われたフジテレビの10時間以上に及ぶ「出直し記者会見」の翌日、中居正広と被害女性の間でトラブルが起きた当日にフジテレビ社員が関与していたとする報道が誤報であったと、『週刊文春』が発表しました。電子版の無料で見られるページに「被害女性を誘ったのは中居本人だった」という旨の「訂正」を出して、謝罪したのです(27日午前中には、読者が限定される電子版の有料ページで、この件に関する「追記」を出しています)。 

 そして現在、文春のこの誤報がなければ、会見にかかった時間や記者たちによる質問の内容もだいぶ変わっていたのではないかという議論が、世間を騒がせています。

 私はこの誤報は、小さく報じるべきではなかったと思いますし、きちんとした「訂正」を発表するタイミングも遅すぎたと思います。1月30日発売の文春本誌での編集長名の「訂正とお詫び」も、1ページのみ。むしろ、今回なぜ誤報が起きてしまったかについて、検証記事を載せるべきだと考えます。

 問題のフジテレビ編成局幹部についての風評は、以前から私も聞いていました。しかしなぜ、被害女性がトラブル当日にその人物に誘われたという報道になったのか。被害女性が直接証言したのか、それとも被害女性の友人やフジテレビ社員といった関係者の証言・噂の類を信じたのか。そして、その証言者は複数人なのか、それとも一人だったのか――。

 文春がどういう記事のウラとりをしているか、読者に説明すべき大事なことだと思います。世間では、中居が単にその社員の名前を出して「彼も来るから」と偽り、自宅に誘ったのではないかという推測も広まっています。

 私たち昔の『週刊文春』に関わった人間は、どんなに大きなスクープを出しても他メディアから「一部週刊誌によると」としか引用されず、絶えず「三流」という冠言葉を付けられる悔しさをバネに、新聞やテレビを上回る正確さで驚くべき事実を伝えることを目標にして、頑張ってきました。そして実際、今では文春が「一部週刊誌」と報じられることはなくなり、むしろメインのニュースで「週刊文春によると」という前置きで取り上げられるようになりました。

 これは現在、編集部にいる後輩たちの努力のお陰でもあります。実際、かつては「週刊誌だから」という理由で、スクープの部分だけが誉められ、細部の間違いは見逃されていた時期もありました。しかし、週刊誌報道がデジタル化された現在では、内容の正確さに新聞と同等のクオリティが要求されていることも自戒して欲しいのです。