フジテレビの清水賢治社長フジテレビの清水賢治社長 Photo:Anadolu/gettyimages

週刊文春の記事訂正でフジテレビを取り巻く世論の風向きは変わった。1月17日の“自滅会見”、27日の“10時間会見”と続いた手痛い失敗劇。フジテレビは四面楚歌(そか)の苦境に陥ったが、突然の記事訂正で一息つくこととなった。元タレント中居正広氏の女性トラブルで舞台となった食事会の設定に、社員が直接には関与していなかったとされたためだ。こぶしを振り上げていたメディアははしごを外されたかたち。いち早く反応したSNSでは「文春廃刊」がトレンドワードに上がり、怒りの声であふれた。第三者委員会設置、トップ2人の辞任と、“無条件降伏” の“土下座対応”だったフジテレビだったが、「社員の関与」については全面否定を貫いてきた。文春の“敵失”を受け、拒絶し続けた社内調査の公表を、今こそ再検討すべきではないか? “不祥事企業No.1”三菱自動車の広報部で危機管理を担当した広報コンサルタントが、フジテレビの信頼回復への道を探る。(広報コンサルタント 風間 武)

週刊文春の訂正で
情勢に変化

「なぜあのタイミングで訂正を出したのかがいちばん疑問に思った。もう少しきちんとした対応が必要だと思う」

「影響力が絶大なメディアだと言える文春さんにとって、その義務は何だろうということについていろいろ厳しい意見があった」

 1月30日に開かれた取締役会の後、メディアの取材に応じた清水賢治社長は、言葉を選びながらも週刊文春へのいら立ちを隠さなかった。言外に、謝罪会見を開き経緯を公に説明すべきとの思いをにじませた。

 フジテレビ経営陣から“恨み節”が漏れ聞こえるのも無理はない。

 訂正箇所はフジテレビにかけられた疑惑の核心部分だったからだ。社員が女性を食事会に誘い自分たちはドタキャンして中居氏と2人きりにさせトラブルが起きた――、という複数の証言に基づく迫真のストーリーは、読む者に強い怒りの感情をかき立て、企業としての責任追及へ駆り立てるだけのインパクトがあった。

 社員の関与が直接的か、間接的かで受けるイメージは大きく変わる。清水社長も、「(会見が)一連の週刊誌報道がベースとなるような質疑応答に終始してしまった。ベースとなるファクトが崩れ、ほころびがあるとそこから上に乗っかってくるものが崩れてしまう 」と手厳しい。

 SNSの「X(旧ツイッター)」でも、「文春廃刊」がトレンドワードに躍り出た。