2016年の「M-1グランプリ」で爆笑をかっさらい優勝した銀シャリ。そのツッコミ担当の橋本直は、もはや職業病とばかりに日常生活においてもさまざまな事柄にツッコミまくってしまうとか。そんな橋本の初エッセイ『細かいところが気になりすぎて』(新潮社)の一部を抜粋・編集し、彼の日常の脳内思考をお送りする。
「ごめんよ、
乾いている洗濯物」
洗濯物を干すのはもっぱら浴室だ。
僕の家の洗濯機は乾燥機能がついていない縦型タイプなので、いつも浴室乾燥機を使って干している。
サンサンと太陽を浴びる天日干しの方が洗濯物たちもさぞ喜んでくれるだろうことは重々理解しているのだが、花粉や黄砂やPM2.5が付着する心配もなければ、突然の雨で濡れてしまうこともない。なにより、洗濯機から浴室までたったの2歩の最短ルートなので、距離的にも浴室乾燥一択なのだ。
ただたまにボーッとしすぎているのか、洗濯機を回しはじめて「その間にシャワー浴びよう」と思い立ち、浴び終わって体を拭いてドライヤーで髪の毛を乾かしているくらいで、ピーッピーッと洗濯の終わりの合図が鳴る。そしていざ洗濯物を干そうとなると……そうです、浴室の洗い場はビチャビチャなのだ。湿気もすごい。やってしまった。
幸い1人暮らしなので自分の洗濯物しかない。仕方ないよねと自分に言い訳しながら、洗濯機から洗濯物を取り出しハンガーにかけ、浴室に干す。もちろん足の裏はビチャビチャになるから、バスマットで拭く。そしてまた洗濯物を取り出して……。
「いや今日どんだけ濡らしていくねん!なんぼほど吸収せなあかんねん!」
「いや乾かす気ある?どんだけ湿気多いところに突入していくねん!」
バスマットと洗濯物の両方からの苦情が聞こえるような気がする。
洗濯物といえば、夜遅く仕事から帰ってきてすぐにシャワーを浴びようと浴室に入ったら、洗濯物が干してある時もある。お先真っ暗ならぬ、お先真っ裸状態。今から取りこむのは面倒くさい。干してある洗濯物に対して、なるべくシャワーの水が跳ねないように、肩身狭くシャワーを浴びる。
「え?乾かしといてそのまままた濡れるの?どういうこと?アメとムチ?」
なんて声が聞こえてくる。ごめんよ、乾いている洗濯物。
挙げ句の果てに、干してあるタオルでそのまま体を拭いたりもする。横着の極みだ。
それに、浴室乾燥が終わっている時はまだいいのだが乾燥中にうっかりシャワーを浴びようとしてしまった時は、突然の熱気に襲われながら浴室に突入していくはめになる。体感的にはバックドラフトかってくらいの熱風がくる。USJのアトラクションやないねんから。