ソフトバンクで孫正義社長の秘書をやっていた時、「孫社長の会議に出席する時は、この言葉だけは絶対発してはいけない」「これを言ってしまうと会議メンバーとして二度と呼ばれなくなるぞ」と話していたことがあります。どんな言葉でしょうか。(トライズ 三木雄信)
25歳・第二新卒の秘書に“憐れむ目”
孫正義が「太陽」に例えられるワケ
私は25歳の時、ソフトバンクグループの創業者である孫正義氏(当時は社長)の「かばん持ち」になりました。今でいえば第二新卒で、ベンチャー企業の社長の秘書に転職したわけです。仕事は、孫社長の全てのミーティングの議事録を取り、社内の関係各所にその内容を連絡して、孫社長のスケジュールがうまく回るようにサポートするものでした。
当時の孫社長は40歳。朝は、ホテルで社外の重要人物とモーニングを食べながらのミーティングで始まる日もありました。そして、その後もずっと会議が続きます。ランチも夕食も、基本的にはミーティングをしながら。会食がない日は夜10時まで会議です。つまり、孫社長は1日13時間から14時間もミーティングをしていたのです。
それら全てに、私は出席していました。孫社長と一緒にいた時間は、家族といた時間よりも圧倒的に長かった。この経験を通じて、私は経営者の基盤を作ることができました。
しかし当時、私が「孫社長の秘書です」と自己紹介すると、たいていの人が“憐れむ目”をしながら、「それは大変だね」「焼け死なないように頑張ってね」と声をかけてきました。
入社してから知ったのですが、ソフトバンク社内では孫社長との付き合い方の金言として、次のようなことが言われていました。
「太陽に近過ぎると焼け死ぬ。遠くても寒くて凍え死ぬ。程よい距離を保つことが長生きするコツ」
孫社長のビジネスへの熱意は並々ならぬもので、周囲への要求レベルも高かった。そんな孫社長を太陽に例えて、周りの社員はどのように孫社長と付き合えばいいかを常に考えていたのです。
もう一つ、上司や先輩が、「孫社長の会議に出席する時は、この言葉だけは絶対発してはいけない」「これを言ってしまうと会議メンバーとして二度と呼ばれなくなるぞ」と話していたことがあります。私も、「気を付けろよ」と口酸っぱく言われました。