スーパーホテル会長 山本梁介 |
「1泊4980円。恥じらいもなくホテルの壁にでかでかと書きました」
業界の度肝を抜く激安価格。山本梁介は格安ビジネスホテル事業へ本格的に乗り出した1990年代半ばを振り返る。5000円で天然温泉大浴場と朝食が付くサービスは、バブル崩壊で財布の紐が固くなったビジネスマンの心をわしづかみにした。
いまや全国に86店舗を展開する巨大チェーンに成長し、平均稼働率は88%。まさしく“デフレ時代の申し子”である。
大阪・船場にある繊維問屋の3代目の山本は、大学卒業後に大手商社に就職。父の死去を機に家業を継いだ25歳当時は「血気盛んで生意気なボンボン」。番頭とぶつかり、家業を譲った。
手元に残った資産で71年にシングルマンション事業を開始。ITで運営管理を合理化した事業は軌道に乗り、その勢いでビジネスホテルに参入してマンション運営のノウハウを応用した。が、まもなくバブルが崩壊。他のホテル同様に客足が落ち、多店舗化は難しい状況に陥った。
デフレ時代に成長できる道はあるのか。
お客や従業員の声を集めると、やはり、最大の訴求要素は価格。当時の価格設定は7000~8000円だったが、ビジネスマンに絞り込んでニーズを突き詰めると、「出張宿泊予算は8000~1万円。夜の一杯を宿泊予算で賄うために、1泊5000円以内に抑えたい」というものだった。
自動チェックインを導入
お客も喜ぶ合理化策で低価格と高品質を両立
安かろう悪かろうでは、リピーターはつかめない。求めるべきは低価格・高品質。「安全・清潔・ぐっすり眠れる」というコンセプトで宿泊に特化し、ムダは省く。