これからの子どもたちが将来求められるのは、学歴ではありません。「高学歴=人生勝ち組」と見なされる時代は完全に終わったのです。子育てで学歴よりも重要な「たった一つの武器」とは何か。25年間で延べ5000名以上のバイリンガルを育成した経験から解説します。(TLC for Kids代表 船津 徹)
学歴だけではもう、社会で通用しない
子育てのゴールとは何でしょうか。何をもってして、「子育ては成功した!」とすればよいのでしょうか? 学歴、就職、年収……さまざまな回答が浮かんでくると思いますが、私は、子育てのゴールをこう定義しています。
「子どもが“自分の強み”を見つけて、人生を自分で選択できるようにすること」
子育てのゴールは、受験や就職などではありません。当然、親が望む進路を歩んでもらうことでもありません。社会に出ていくわが子が、「自分はこう生きたい」という夢を描き、その目標に向かって自分の人生を突き進んでいく。そのための土台を整えることが、子育てのゴールです。
ひと昔前までは「一生懸命勉強して良い大学に入れば、人生勝ち組」というシンプルな方程式が成立していました。しかし、これまで人間が行っていた仕事の多くをロボットやAIが担うようになった現代社会では、もはや一流大学の卒業証書一枚で成功を勝ち取ることはできなくなりました。
「勉強ができて偏差値が高い=優秀」と見なされる時代は、もう終わったのです。
この事実にいち早く気づいたアメリカの教育は、今、大きく変わりつつあります。
優秀の定義は「偏差値」から「人間力」へ拡大
世界屈指の名門大学であるカリフォルニア大学は2020年、SATやACTと呼ばれる「学力テスト」を入学選考から撤廃しました。これに追随するように、2021年現在、全米約5300大学のうち、入学選考から学力テストを「完全撤廃」した大学が1830校、学力テストの受験をオプション(任意)とする大学が1400校に上っています。
学力テストに代わって注目されてきたのが、「生徒自身の情熱」です。「あなたの強みは何ですか?」「得意なことは何ですか?」という問いに対する生徒の答えで合否が決まります。
ちなみに「打ち込んできたことは受験勉強です」という答えでは、不合格です。どの分野の勉強が好きで、高校時代にどれだけ深く掘り下げてきたのか、どんなチャレンジをしてどんな実績を上げたのか、自分の「情熱」の中身を具体的なエピソードで明示しなければなりません。
さらに、大学で何を学び、将来どんな道に進みたいのかという「自分の情熱」をストーリーに織り込み、大学側に自分の「伸びしろ」をアピールすることが欠かせないのです。
多様性を重視する今、アメリカの大学は、勉強が得意という学生だけを集めるのではなく、スポーツ、音楽、アートなどで卓越した人材、多様な「強み」を持つ学生をキャンパスに取り込むことで「新たな価値」を創造しようとしているのです。優秀の定義は学力の偏差値だけではなく、自分らしさを発揮できる「人間力」まで広がっているのです。
これからのアメリカは「国語は得意だけれど算数が苦手」という生徒には「得意な国語で突き抜けよう!」「自分で小説を書いてみよう」と伝え、子どもたち一人ひとりの「強み」を伸ばす教育にシフトしていくでしょう。
子育て成功のカギは「強み育て」にある
子どもが社会の変化に翻弄されずに、自分らしく幸せに生きていくには、失敗や挫折に負けない「たくましさ」を確立しなければなりません。一生ものの武器になるたくましさですが、どのように育てれば良いのでしょうか?
たくましさが育つ要因は、家柄、血筋、遺伝ではありません。もちろん親の学歴や職業も無関係です。「子どもの潜在的な強みを引き出すこと」でたくましさは育つと断言できます。
つまり、子育てで最優先すべきは「強み育て」なのです。強みは、音楽でもスポーツでも勉強でも、なんでもいいのです。