稲盛和夫が激ギレした管理職の「評論家しぐさ」口だけ社員への叱責が正論すぎて涙目になる…EPA=JIJI

ここ最近、部下を叱れない上司が増えている。「ハラスメントになりはしないか」「関係が悪化したらどうしよう」……。上司がためらう気持ちもわからないではないが、それは本当の優しさだろうか? 「経営の神様」稲盛和夫氏は、時に激しく部下を叱咤した。稲盛氏の事例をもとに「公正な叱責」のあり方について考えたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)

稲盛は何に激怒したのか

「お前は評論家か!」

 経営の神様と称された稲盛和夫氏は、破綻した日本航空(JAL)再建の業績報告会で報告する部下にこう叱咤した。当時、JALでは毎月1回、3日間にわたり、全役員、各本部長、グループ会社社長など会社のトップ層が集まる業績報告会が開かれており、会長の稲盛氏も当然出席していた。

 この報告会は単なる業績発表の場ではなく、収支責任を負う幹部が「叱られ役」として厳しい指導を受ける場でもあったのだ。「お前は評論家か!」という言葉には、「口で説明するだけではなく、自分の手で現実の問題を解決する責任感を持て」という意味が含まれているのだろう。

 JALでは、特に収支管理の責任者は、稲盛氏から厳しい叱責を受けることが多かった。稲盛氏自身が「会社の業績と成長にとって最も重要な場」と位置づけたこの報告会では、成果報告にとどまらず、改善策や戦略の見直しも真剣に問われ、稲盛氏の怒号が飛び交う緊張感が漂っていた。

 私は当時JALの取材をしており、実際に叱られた人からこう語られたものだった。

「イヤ本当に、机を叩いて、もう顔を真っ赤にして怒りますからね。逆に言うと、これだけ真剣に自分のことを叱ってくれる上司は、これまで本当にいただろうかと思いました」(当時、JAL国内路線事業本部長だった菊山英樹氏の話。PRESIDENT 2012年1月2日号)

 実は稲盛氏が菊山氏を叱った理由は、業績が悪かったからではなかった。むしろ、稲盛氏が導入したフィロソフィーと部門別採算制度(アメーバ経営方式)により、業績は黒字化に向かっていた。

 では、稲盛氏は何に対して激怒したのか。