保険ラボ

損害保険の構造的課題と競争のあり方に関する議論では、企業内代理店についても焦点が当たり、独占禁止法の観点や代理店としての自立の促進などが求められている。もっとも、一口に企業内代理店といってもその実態はさまざまであり、より深い議論が必要である。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、企業内代理店を巡る論点の一つである特定契約比率について、6つの視点について論考する。(成島康宏 元金融庁監督局特別検査官)

損保の構造的課題で企業内代理店にも焦点
影響が大きい「特定契約比率」の見直し

 「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書(2024年6月25日付。以下、「報告書」という)においては、企業内代理店の在り方について指摘が行われている。

 企業内代理店とは、主に大企業グループに属する保険代理店で、所属する企業グループの火災保険や賠償責任保険などの企業保険に加え、従業員向けの保険契約を取り扱う代理店のことをいう。つまり、保険契約者(企業)の一部門でありながら、保険会社の代理という立場を兼ねており、『その立場が構造的に不明確なものになっており、一部の事案では、企業内代理店を介した競合他社との競争関係情報のやり取りが発生するなど、独占禁止法の抵触リスクを高めていたおそれがあった』と、報告書で指摘されている。

 そのため企業内代理店のあり方について議論がなされているが、議論の中でも「特定契約比率」に関する見直しは、非常に大きな影響が生じるものと推察される。特定契約比率とは、企業内代理店が属する企業グループの保険契約を一定の割合以内に抑えるようにする規制のことを指す。

保険ラボ,損害保険業の構造的課題「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議(第3回)」から抜粋
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 本稿では、この特定契約比率の見直しについて、6つの論点から私見を述べたい。