インフレによる消費者の節約志向と人件費高騰で小売業界は苦境に陥っている。特集『2025年「倒産ドミノ」勃発!?倒産危険度ランキング【上場434社・最新版】』の#2では、小売業界の倒産危険度ランキングを作成。“危険水域”にランクインした22社の顔触れを明らかにする。地方の百貨店が上位に複数ランクインし、ホームセンターの苦境も目立った。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
石破内閣の掲げる最低時給1500円で
地方百貨店の倒産ドミノが発生?
2024年7月上旬、円相場は1ドル=160円台を記録し、歴史的な円安水準となった。外国人にとって日本は“お買い得”な旅行先となり、訪日客が押し寄せている。小売業界でその恩恵を受けたのが、首都圏にある大手百貨店だ。
三越伊勢丹ホールディングスの24年3月期の決算によると、伊勢丹新宿店の売上高は前期比14.7%増となり、過去最高となる3758億円を突破した。同社の常務CSDO(最高戦略・デジタル責任者)兼CFO(最高財務責任者)である牧野欣功氏は決算会見で、同店の24年度の売上高が4110億円となる見通しも明らかにした。
対照的に地方百貨店では、新型コロナウイルスの感染拡大の終息後もなお、苦境が続いている。今年4月、長野県松本市で創業139年を迎えた老舗百貨店の井上は、25年3月末で松本駅前にある本店を閉めると発表した。同店は施設の老朽化のため大規模な設備更新が必要となっており、閉店という決断に至ったという。
業績悪化が続き、立ち行かなくなった地方百貨店もある。青森県弘前市の中三は8月29日に破産手続きを開始。負債総額はおよそ9億円だった。同日付で事業を停止し、創業128年の歴史に幕を下ろした。
10月に首相に就任した石破茂氏は、20年代に最低賃金を全国平均1500円まで引き上げる目標を宣言した。ギリギリの経営で生き延びている地方百貨店にとって、最低賃金の引き上げは人件費増につながり、“死刑宣告”に近しいともいえる。今後、地方で倒産ドミノが発生する可能性は小さくない。
ダイヤモンド編集部は、小売業界の倒産危険度を検証し、ランキングを作成。その結果、22社が“危険水域”にあることが判明した。次ページで、22社の顔触れを紹介していく。17位に高島屋、13位に流通の巨人、イオンがランクインした。