笑えない…!中国の「独身の日」セールが2024年に限って前倒しになったワケダブル11ショッピングカーニバルで、「赤い封筒」を引くためにTmallのブースに並ぶ観光客たち Photo:CFOTO/gettyimages

中国政府の経済政策に、多くの投資家が右往左往している。政府は9月下旬、大規模な景気対策を矢継ぎ早に発表。初動反応として一時的に中国株は上昇し、欧米の株式市場でも中国関連株が強含みとなっていた。しかし10月に入ると、一転して中国株や資源国、新興国などの金融資産の価格上昇ペースが鈍化し始めた。中国のネット通販企業が、11月11日の「独身の日」関連セールを、2024年は前倒しでスタートしたことは、デフレ圧力の高まりを示しているだろう。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

中国「独身の日」セールが前倒しになったワケ

 9月後半から中国政府は一連の経済対策を発表してきた。それをきっかけに一時、一部の投資家は中国関連株への投資を積極化した。割安感の高まった中国株を買い戻し、わが国やインドの株式などを売却する投資家が目立った。

 こうした動きに伴い、9月末まで上海総合指数は21.4%、香港のハンセン指数は15.8%上昇した。外国為替市場では、中国の経済対策発表をきっかけに、ドルを売って人民元などを買うファンド勢も見られた。

 中国の経済対策への期待は、世界の金融市場にも波及する。まず、資源国の通貨が反応した。原油、鉄鉱石などの主要産出(輸出)国であるブラジルのレアル、銅の主要生産国であるチリのペソ、ペルーのソル、石炭、鉄鉱石、天然ガスの生産が多いオーストラリアのドルは、米ドルに対して上昇した。

 ブラジル、チリ、ペルー、オーストラリアは、中国の最大の輸出相手国である。商品市場では、中国政府が不動産市況の下支え策を強化するとの観測から、銅や鉄鉱石の先物価格が上昇する場面があった。主要先進国では、電気自動車(EV)シフトの失敗で自動車産業が苦境にあるドイツの株価が反発した。

 ところが、10月に入ると、一転して中国株や資源国、新興国などの金融資産の価格上昇ペースが鈍化し始めた。背景には、中国政府は財政出動を増やす方針は示したものの、その事業規模や、期待される効果にまでは踏み込まなかったことがある。特に、不動産市況の悪化を食い止め、個人消費が増えるような具体的な政策を示さなかったことが、主要投資家の懸念をあおった。

 経済指標から、中国経済が厳しい状況であることも明確になった。中国の7~9月期の実質GDP成長率は、前年同期比4.6%だった。これにより、年間5%前後とする経済成長目標の実現は難しい、とみる向きが増えた。中国のネット通販企業が、11月11日の「独身の日」関連セールを、2024年に限って前倒しでスタートしたことは、デフレ圧力の高まりを示しているだろう。