【今回のまとめ】
1.米国経済は抜きん出て強い
2.政策金利引き上げへの技術的な下準備は整った
3.イールドカーブは5年のところが持ち上がっている
4.ドイツとの比較では、米国の利回り面での妙味がUPした
ドル高が続いている
先週、ドル/円が一時109円をつけました。これは2008年8月以来の高値です。そこで今回は、なぜドル高になっているのかを整理してみたいと思います。
強いアメリカ経済
まず米国経済が他の先進国に比べて強いことを指摘する必要があります。下は先週発表された経済協力開発機構(OECD)による予想です。
今年から来年にかけてのGDP成長では、米国が群を抜いていることがわかります。
このような経済の好調は、堅調な内需によって支えられています。下は実質民間消費支出です。
ここでもアメリカが際立っていることがわかると思います。
FRBは、どうにでも動ける
米国連邦準備制度理事会(FRB)はこのような経済の立ち直りを見て、これまでの非常時の金利政策を改め、平常な金利政策へ移行してゆこうとしています。
それは言い直せば量的緩和政策から脱却するということです。
実際、債券買入れプログラム(QE)は、10月をもって終了します。
これに加えて、先週の連邦公開市場委員会(FOMC)では二つの重要な事がシグナルされました。
第一番目のポイントは、FRBが次の金利政策に戻って行くにあたって、これまでの量的緩和政策の後始末は、後回しで良いということがハッキリ表明されたということです。
それでは量的緩和政策の後始末とは、具体的に何を指すのでしょうか?
それはFRBが市場に流動性を提供する過程で、債券類をどんどん買い込み、それがFRBの金庫に積み上がって在庫になっているという事を指します。普通に考えれば、この在庫をちゃんと処分してから、次の政策へ移行するのが筋だと思います。
ところがFRBは「債券の在庫は、保有したままで構わない」という考え方を表明しました。債券には償還、つまり満期というものがあります。従ってずっと保有したままにしておけば、いずれ満期が来て、それはキャッシュに変わるわけです。そのように自然な成り行きに任せて在庫を徐々にキャッシュ化する方法は、時間がかかるけど、市場に債券を売り返す必要が無いので、需給関係を悪化させる懸念はありません。
これは債券、とりわけ長期債の保有者にとってはホッと胸をなでおろす発表です。
次に現在、実質ゼロ金利となっているわけですが、今後の経済指標の動向によっては政策金利であるフェデラルファンズ・レートの引き上げが始まることがほのめかされました。
今回のFOMCでは、その引き上げのタイミングに関しては、以前より遅くもなってないし、早くもなってない、つまり変更ナシだったのです。ただ「データ次第で、急な対応が必要となったあかつきには、すぐ動けるように」具体的にどうフェデラルファンズ・レートを誘導してゆくのか、その技術的な手法が披露されました。そこではミューチャルファンド(=投信)とレポ契約するなどの方法で、政策金利を一定のレンジの中に収める意向であることが解説されたわけです。
するとFRBは、クチでは「いままでとタイミングはなにも変わっていないし、考え方もかわっていない」と言いながら、利上げのための準備という点では、着々とそのステップの明快化を進めているわけです。
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