サブプライムローン問題に端を発した金融市場混乱に収束の気配がまったく見えないなか、新たな火種が出現した。それは、SIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)だ。

 SIVとは、資本(株式部分)とMTN(ミディアムターム・ノート、中期社債)とABCP(資産担保コマーシャルペーパー)で資金を集め、MBS(不動産融資担保証券)、CDO(債務担保証券)、劣後債などで運用するファンドだ。

 欧米の金融機関の多くは、このSIVを使って荒稼ぎに走った。SIVは、銀行やその系列会社から投資の助言を受け、金融商品を購入する過程で、銀行に多額の手数料収入をもたらしたとされる。ところが、SIVに関する銀行の株式持ち分そのものは低く抑えられたために連結対象からはずれ、実態はベールに包まれていた。不透明極まりないSIVの総額は4000億ドルに上ると見られている。

 このSIVが2007年7月末のサブプライムショック以降、ABCPの引き受け手が少なくなったことで、資金繰りに窮し始めた。さらに、「運用資産に占める直接のサブプライム関連商品比率は小さい」(石原哲夫・みずほ証券シニアクレジットアナリスト)ものの、MBS、CDOの価格下落を受けて損失を抱え、窮地に立たされている。

 非連結対象で損失を抱えているということで思い起こされるのは、山一證券の破綻の原因となった“飛ばし”だ。顧客への損失補填のための違法な株の現先取引に伴う損失が累積し、山一は1997年、自主廃業に追い込まれた。SIVは適法だが、非連結で実態が不透明という点では“飛ばし”と大差ない。

 10月15日、シティグループ、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカなど米国大手銀行が、SIVから格付けの高い資産を買い取る1000億ドル規模の共同基金を設立すると発表した。

 資金繰りに窮したSIVは資産をたたき売るしかないが、そうなると「CDOなど市場性の乏しい商品の価格がさらに下落し、それらを保有する銀行本体も損失を拡大させる公算が大きい」(中川隆・大和証券SMBC金融市場調査部次長)ためだ。

 ただ、これとて資産の傷みを修復するものではない。SIVが抱える損失は、まず資本の出し手が負担するが、資本を超える部分についてはファンドを傘下に抱える銀行が引き受けることになる。ファンド破綻で突然、銀行の損失が表面化するという事態は十分に起こりうる。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 竹田孝洋)

※週刊ダイヤモンド2007年11月3日号掲載分