日本を代表する自動車メーカー、ホンダと日産自動車が経営統合へ向けて協議を進めている。そこに見落とされている「死角」はないか? 今こそ胸に刻むべき、ホンダの創業者・本田宗一郎の言葉を紐解いてみよう。(イトモス研究所所長 小倉健一)
本田宗一郎が「恐ろしい」と語ったもの
自動車業界で大きな資本提携、経営統合が起きようとしている。ホンダと日産自動車という、日本を代表する自動車メーカー2社が、会社をひとつにまとめる話し合いを始めたのである。両社は12月23日の取締役会決議で、計画を進めるための基本的な約束事を決める見通しだ。
これまで電気自動車の開発で協力関係にあった2社だが、今度は会社そのものをひとつにするという、とても大きな決断をしようとしている。具体的には両社の上に新しい会社(持株会社)を作り、2社が力を合わせて事業を進めていく計画である。
ホンダの創業者であり、日本の経済史において伝説の経営者ともいわれる本田宗一郎は、著書『会社のために働くな』で「人間の気分というものは恐ろしいものだ」とも述べている。
「つねに深く観察していないと大変なことになる。一時期つかんだ気でいて安心していると、はねっ返りが恐ろしい」という指摘は、まさに現在の日本メーカーの状況を言い当てている。日産は電気自動車の分野では、中国を含む世界の車メーカーの先駆者的存在であった。しかし、中国では多くの後発車に市場シェアを奪われ、販売が非常に苦しい状況にある。
本田は重ねてこう指摘する。