今年1月、イギリスにおいて、ある一定の就業期間を経た派遣労働者に正規社員と均等の労働条件(給与水準や労働時間、休日などの権利)を保障するという規則が成立した。施行は来年秋の予定だ。しかし、半年働き1カ月休暇を取るといった様々なライフスタイルが許容されている同国では、雇用形態は多様であり、派遣という労働スタイルを自ら選ぶ人も多い。そのため、均等処遇の法制化がそのまま派遣市場の衰退につながるというわけではなさそうだ。日本ではあまり報じられない派遣大国の実情を、イギリス最大の人材紹介会社であるヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント社の幹部に聞いた。
(聞き手/ジャーナリスト・大野和基)
英ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント社マネジングディレクター
―イギリスには人材派遣業者はどれくらいあるのか。
6000から8000社だ。当社は、その中でもイギリスで最大のリクルーターであり、特に専門職の分野では大きなシェアを持っている。数字をあげれば、毎週3万5000人規模で顧客企業に派遣している。その8割が専門職だ。また、正社員のリクルーティングにも関わっており、毎年何万人もの正社員を生み出している。
―専門職というと具体的にはどのような職種か。
会計やファイナンス、IT、薬品、法律、ヘルスケア、医師、看護士など、だ。
―その中でもどの職種が一番多いか。
ITが圧倒的に多い。ちなみに、イギリスにおいては非常に専門的な職種になると、同じ派遣社員でもあっても、(temporary workerではなく)、freelance interim(interimは暫定の意味で、interim prime minister=暫定首相のように使われる言葉)とかcontract workerと呼ぶことが多い。temp workerという言葉は難易度が低い仕事に携わる人に対して使うことがもっぱらだ。たとえば、事務職とかtradesman(配達人)らのことを指す。
質問に戻れば、IT時代になるにつれて、プロジェクトごとに働くcontract workerが増えてきた。エンジニアは、フリーランスであることが多いためだ。基本的にはプロジェクトが始まると、それにふさわしい人を集め、終わると解散というやり方だ。
―企業が派遣労働者を受け入れるとき、契約期間などで決まりはあるのか。
ITの世界ではローリング(更新型)契約が多い。半年やってうまくいけば、更新するというやり方だ。一方、その他の分野では基本的には期間などに制限を設けない契約が主流だ。6週間や8週間といった短い場合もあれば、秘書の場合は1週間という極端に短い場合もある。