「仕事ができない社員」が無意識に言っている「漢字2文字」のNGワードとは?『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営について解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第4回は、主人公・花岡拳が断行した組織改革と「商売の鉄則」を学ぶ。

花岡が「二度と使うな」と叱咤した言葉

 経営の悪化する居酒屋の料理長と店長を降格させ、後任に若手を登用する組織改革に乗り出した花岡。自らの経営者としての直感を信じて、さまざまな手を打つ。

 花岡は新たに料理長となった石貫に対し、全メニューを見直した上で、3日以内に「アイテム別に十品ずつ」の創作メニューを完成させるよう指示を出す。石貫は「無理です」と難色を示すが、花岡は「プロなら、無理なんて言葉は二度と使うな」と叱咤激励する。

 花岡の改革は、人事やメニューにとどまらない。自ら接客を担当し、さらには採算度外視のドリンク半額イベントまで断行する。「ウソをつかない店」の方向性を示したことでスタッフの連帯も強まり、わずか3日で、居酒屋の空気が変わり始める。

 とはいえドリンク半額の施策は、リスクも高い。花岡の経営パートナーであるノブも「出血大サービスで赤字幅が(増える)」と苦言を呈する。だが花岡は平然とし、「『損して得とれ』これ商売の鉄則だ」と返すのだった。

「経営の神様」とスタートアップの共通点

漫画マネーの拳 1巻P91『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

「損して得とれ」とは、「目先の損失は受け入れて、将来的により大きな利益を得るような、長期的な視点を持つべき」という考え方だ。

「経営の神様」とも呼ばれたパナソニック(旧:松下電器産業)の創業者・松下幸之助も「ビジネスだけではなく、社会生活全般に通じる考え方だ」と説いた。

 こうした経営戦略は、起業やスタートアップの世界にも根付いている。スタートアップの起業家や投資家がよく使う「Jカーブ」というのが、まさに損して得とれを具現化した言葉なのだ。

 多くのスタートアップ企業では、創業から数年程度は赤字を掘り続けて、仮説検証を繰り返し、製品やサービスを磨き上げていく。そして、ここぞというタイミングでアクセルを踏み、ビジネスを本格化させる。そこで黒字化を実現し、さらなる成長に向かっていく。

 この様子を「利益」を縦軸、「時間」を横軸に置いてグラフ化すると、アルファベットの「J」のようになることから、スタートアップの成長曲線をJカーブと呼ぶのだ。

 Jカーブを描くには、立ち上げから一定期間の赤字を要するため、それでも揺るがない、身の丈以上の資金力が必要だ。だからこそスタートアップは、ベンチャーキャピタルをはじめとする外部組織から、資金を調達することが一般的になっている。

 わずか3日で「いい風が吹いてきた」と、組織改革の手応えを感じている花岡。その様子は、彼への出資を検討する成功者・塚原為ノ介の目にどう映るのか。物語は次回に続く。

漫画マネーの拳 1巻P92『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 1巻P93『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク