世界投資へのパスポート
2016年4月11日公開(2016年4月11日更新)
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「世界投資へのパスポート」

著者・コラム紹介

世界投資へのパスポート

広瀬隆雄 ひろせ・たかお
三洋証券、S.G.ウォーバーグ証券(現UBS証券)、ハンブレクト&クィスト証券(現J.P.モルガン証券)を経て、2003年、投資顧問会社・コンテクスチュアル・インベストメンツLLCを設立。長年、外国株式関連業務に携わっており、特にBRICsをはじめとした新興国市場に詳しい。米国カリフォルニア州在住。

広瀬 隆雄

アベノミクスへの疑念から円安トレンドは崩れた!
円高では日経平均株価は上昇しないので
いまは米国株やブラジル株、メキシコ株を買え!

<今回のポイント>
1.ドル/円は心理的に重要な110円を割り込んだ
2.アベノミクスの有効性が疑問視され、再び閉塞感が募っている
3.インフレになりはじめている国の通貨は、売られやすい
4.ドル安は米国の輸出企業、石油会社、銀行にとってプラス
5.ドル安はブラジル、メキシコなどの新興国にもプラス

急激に進行する円高は
アベノミクスの有効性への疑問の現れ

 先週、為替市場は急激な円高に見舞われました。ドル/円は、心理的な抵抗線と見られた110円をあっさりと割り込み、108円台で取引されています。

 2012年秋以降、ずっと続いていたドル高トレンドは、完全に崩れ、チャートは教科書的な三尊天井を完成しました。

 このことはアベノミクスの有効性に疑問を投げかけていると思います。

 アベノミクスは大胆な金融緩和をすることで、為替を円安に持って行き、インフレを起こすことを狙っていました。そうすることで、すっかり日本人の間に定着してしまったデフレ心理に働きかけようというわけです。

 デフレとは、ありとあらゆるモノやサービスの価格が下落する現象を指します。

 皆さんは(モノが安くなるのはたいへん結構なコトだ)と思うかもしれません。

 それは事実なのですが、物価がことごとく下落する状況では、企業の経営者が新しく工場を建てたり、従業員を雇うなど、動けば動くほど墓穴を掘ってしまいます。

 つまり経営が守りに入ってしまうのです。

 そのような状況では、閉塞感がつのり、過去に借りた借金の返済負担だけが重く圧し掛かります。

 円高になっているということは、我々は再びそういう状況へ逆戻りしてゆくことを暗示しているのです。

 そのシナリオ下では、当然、株も上がりませんし、タワー・マンションなどの不動産に投資してもダメだし、円高で外国人観光客にとって日本はコスト高で行きにくくなります。

 つまり今まで上手く行きそうな兆候が見られた、いろいろなことが、すべて「逆流」してしまうリスクに我々は晒されているのです。

 もちろん今回の円高の背景には、先のマイナス金利の導入が金融界から総スカンを喰ったということがあると思うのですが、同じくマイナス金利を導入している欧州では、そういう不満の声は小さいです。

 なぜ日本の金融機関だけが甘やかされるべきなのかは、よく考えてみる必要があると思います。

アメリカのインフレ期待は上昇
ドル安になると原油価格も上昇する傾向

 一方で、米国ではインフレ期待が上昇しています。下は5年先5年物期待インフレ率のチャートです。

 これは米国財務省証券利回りからTIPS(インフレ連動)債利回りを引き算して求められます。

 このグラフが上向いているということは、「いまから五年先を起点として、そこから先の中期的なインフレの展望が上向いている」ということを意味します。

 インフレが「微熱状態」のように出始めている国の通貨は、売られやすいです。

 インフレ期待が高まっている背景には、原油価格の底入れも影響していると思います。

 普通、ドル安になると原油価格は上昇する傾向があるので、今後も原油価格は上昇する可能性があります。

ドル安になれば輸出企業にはプラス
ドル安は新興国にもプラスになる

 ドル安になると輸出企業の利益は増えます。またドル安は原油高要因なので、原油価格が上昇すれば2014年以降、落ち込みが激しかった石油会社の利益が底打ちすることを意味します。

 銀行はシェール企業にお金を貸付けている関係で、原油価格が下がると貸倒引当金を積み増さなければいけなくなります。それは銀行の利益を圧迫します。だからドル安で原油高になれば、引当金を積み増すプレッシャーから解放されるので、銀行の収益にとってもプラスに働くわけです。

 ドル安は、新興国経済にとってもプラスに働きます。なぜなら新興国は一次産品の輸出に頼っている国が多く、コモディティ価格はドル安に助けられるからです。

 さらに米国の投資家はドル安局面になると新興国、とりわけメキシコやブラジルなどの南米諸国への投資に積極的になることが知られています。このところ新興国への資本流入は歴史的に見ても極めて低調でした。

 それがより高いリターンを求めて、米国の投資資金が資源国へ戻る可能性が高くなっているのです。

いまは日本株を買う時ではない
海外の投資機会へシフトせよ

 円安だと日経平均が上昇するのと同じ理屈で、ドル安だと米国株が上昇します。もし今後も円高が続くのであれば、日本株には多くを期待できないでしょう。

 従って、海外への投資の割合を増やすことをお勧めします。

 米国株では
(1)経済が拡大し、(2)金利が上昇する時に騰がりやすい、素材、エネルギー、工業、市況株が良いと思います。

 逆に金利上昇局面では売られやすいバイオテクノロジーやハイテク株は避けるべきです。

 またブラジル株、メキシコ株などの、アメリカの投資家が好んで投資する新興国も有望だと思います。iシェアーズMSCIブラジル・キャップトETF(ティッカーシンボル:EWZ)やiシェアーズMSCIメキシコ・キャップトETF(ティッカーシンボル:EWW)が良いと思います。
 

【2017年5月1日更新!】

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