情報・通信の世界で高速大容量化が進み、情報システムは大きく変化した。現在は、情報を他者に預ける“クラウドコンピューティング”の隆盛で、「情報のセキュリティ」が再び注目を集めている。世界40ヵ国以上で事業を展開する、シマンテックのナンバーツーに話を聞いた。
(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

─米国で起こることは、いずれ日本でも起こる。現在、日本でもネットワークに関する「情報セキュリティ」の重要性が高まってきたが、米国ではどのような状況にあるか?

シマンテックのナンバーツーが明かす<br />恐るべきサイバー犯罪の実態<br />~組織されたハッカー集団が闇市場で情報売買もビル・ロビンズ(Bill Robbins)
1967年生まれ。サザン・メソジスト大学で経営学と経済学の学士号をトップの成績で取得。複数のIT企業勤務を経て、2002年に米ベリタスソフトウエアに入社(05年にシマンテックと合併)。06年に同社アジア太平洋・日本地域担当の上級副社長、07年には米国地域担当の上級副社長。09年2月より、全世界の営業施策と事業運営を統括する執行副社長に就任。歴史が好きで、日本の武士道に関心を持つ。
Photo by Shingo Miyaji

 悪意を持って情報システムへの侵入を試みる“ハッカー”たちの活動は、過去にないほどの勢いで増えている。

 たとえば、シマンテックの事例を挙げると、2008年には170万種類のマルウェア(悪意ある新型ウイルス)を検出して固有のDNAを特定したが、それまでの15年間のトータルよりも数が多かった。それが09年になると、300万種類にまで増えた。

─なぜ、それほど急激に増えているのか?

 インターネットの発達により、世界が非常に小さくなった。そのことで、国境を越えた“サイバー犯罪”が増えているからだ。

 個人や企業が持つ情報を盗み出すハッカーたちは、3~4人という小規模な単位から、300~400人という大規模な集団まで、“組織化”されている。しかも、最初から特定のターゲットに絞って情報を盗み出し、ブラックマーケットで売りさばく。特定の情報を欲する人たちと、情報を盗む人たちのあいだで、“市場”が出来上がっているのだ。