スマホとパソコン写真はイメージです Photo:PIXTA

外国人スパイが日本企業の機密情報を狙う事例が後を絶たない。善良な友人のフリをしてターゲットにさりげなく近づいてきて、本人が知らぬ間にスパイ行為に加担させられているケースもあるという。情報漏洩を防ぐための心構えと具体的な対策を、元公安部捜査官に学ぶ。本稿は、松丸俊彦『元公安、テロ&スパイ対策のプロが教える!最新リスク管理マニュアル 激増する国際型犯罪から身を守るために』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。

頻発する機密情報漏洩事件の対抗策
今どきの入退社時の必須条項とは

 現代社会では、各企業は熾烈な競争を繰り広げています。研究開発に力を注ぎ新しい製品や技術を生み出したり、新しいオペレーションやサービス、顧客開拓、独自戦略などを立て、他社をリードしようと頑張っています。

 これらの情報は財産であり、企業の機密情報として管理されているのが普通です。スパイのターゲットの1つが、そんな企業の機密情報です。

 スパイが直接かかわったというわけではありませんが、企業の情報漏洩事件は、これまでも日本でいくつも起こっています。

 例えば日本の製薬会社や電子部品の会社、自動車メーカーなどでも、ライバル会社に社員が引き抜かれることで、社内の極秘データやノウハウが流出するケースはありました。

 記憶に新しい大きい事件では、2022年9月にかっぱ寿司の当時のT社長が「不正競争防止法」違反の疑いで逮捕された事件があります。

 T社長は、競合する「はま寿司」の仕入れ価格などの営業秘密を不正に入手して、持ち出していたのです。T氏は、はま寿司の運営企業に長年勤務し、かっぱ寿司に転職するときにデータを手に入れたようです。

 T氏は2023年5月に東京地裁より懲役3年(執行猶予4年)、罰金200万円の有罪判決を受けています。