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新卒採用において、企業はどのような人材を求め、どの事業に注力しているのか。本連載では、各業界をリードする企業がどのような採用戦略を打ち出しているのかを分析し、今後の動向を探る。第10回では「電機業界」を取り上げ、業界の専門家に最新のトレンドや企業が求める人材像を聞いた。(ダイヤモンド・ライフ編集部 大根田康介)
自社の独自性を明確に打ち出し
新たな方向への変化をためらわない
かつて電機業界では、各社が総合メーカーとして同質的な事業を展開する傾向が強かった。冷蔵庫や洗濯機といった家電から発電設備などの重電まで幅広く手がけ、家電製品のラインナップもほぼ同じという状況が一般的だった。
しかし近年は、自社の事業を再定義し、強みを生かした経営への移行に成功した企業が業績を伸ばしている。その代表例が、日立製作所とソニーグループだ。
日立は、全社的にITを中心に事業を再編し、IT戦略に沿った事業を維持する一方、それ以外の事業は規模を問わず外部へ切り離す方針を取っている。この選択と集中によって経営にメリハリが生まれ、株価も上昇した。
ソニーグループも同様に、自社を「テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニー」と再定義し、「世界を感動で満たす」という軸のもとでエレクトロニクス事業を捉え直している。ゲーム、映画、音楽、アニメといったエンターテインメントを中心とした企業へと変革を進める中で、業績を伸ばした。
「両社に共通するのは、自社の独自性を明確に打ち出し、新たな方向への変化をためらわないことで成長している点である」と、早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内厚氏は話す。
ここからは、電機業界の構造や仕事内容、そして採用状況を再確認し、各企業がどのような人材を求めているのかを探る。