ローソンがサンクスから奪取<br />コンビニの鞍替えが始まったサンクス富山の転換に伴う店舗移転や改装などの費用はローソン本部が負担し、日販の工場を目指す
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 ついに、サークルKサンクスの地域本部企業がローソンへの鞍替えを決めた。なのはな農業協同組合子会社のサンクスアンドアソシエイツ富山(77店)が、来年7月1日の契約満了をもってサークルKSとの契約を終了し、ローソンにコンビニエンスストア事業を譲渡するのだ。

 サークルKSの地域本部企業の転換騒動は、サンクス・ホクリアやシー・ヴイ・エス・ベイエリアでも浮上したが、いずれのケースも鞍替え先としてローソンの名前が筆頭候補に挙がっていた。

 サンクス富山は、システム投資などが重いコンビニ事業は「エリアライセンス方式では早晩立ち行かなくなる」と見て、サークルKSと今後の展開を数年前から話し合っていた。昨年1月にセブン-イレブンが富山に進出し、競争が激化したことが事業譲渡の流れを後押し。今年6月にローソンとサークルKSに対して競争入札を呼びかけた。

 サークルKSは、「加盟店に(他チェーンに替わる)迷惑はかけられないので、一部上場企業として説明のつく範囲で、資産価値評価にプラスアルファした相当金額を提示した。そもそも、サンクス富山は地方都市のレベルとして非常に高く、他チェーンに負けていなかった」と語る。

 実際、「(入札価格は)手取り金額にすれば両社に大差はなかった」(関係者)し、サンクス富山の日販は県内他チェーンに比べてよかったという。

 しかし、サンクス富山にとって重要なのは、「加盟店が5年10年先もサンクスブランドで戦い抜いていけるのか」(同)だった。ローソンは、「生鮮コンビニや店内調理などの戦略や、粗利益率がより高いためオーナーの利益が上がる」ことなどが評価されたと分析する。

「ほかにも転換の話をする地域本部企業がある」(業界関係者)といわれるサークルKS。今回を前例として同社が草刈り場になる恐れは否めない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

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