ステップワゴンe:HEV AIRフロントビューステップワゴンe:HEV AIRのフロントビュー。島根・持石海岸にて Photo by Koichiro Imoto

ホンダのミニバン「ステップワゴン」は、ライバル車であるトヨタ「ノア/ヴォクシー」や日産「セレナ」に販売台数で圧倒されている。1996年の誕生時は一世を風靡したのに、なぜ今は人気が低迷しているのか。試乗記も交えて考察する。【前後編の後編】(ジャーナリスト 井元康一郎)

操縦性、乗り心地は?
ロボット「アシモ」の裏話も関係...

 試乗したステップワゴンは、第6世代「e:HEV AIR」の7人乗り。ドライブは2回で、1回目が東京~群馬北を周遊、2回目が東京~鹿児島周遊。総走行距離は4543.7km、乗車人数は1~6人。

 重くて車高の高いミニバンは基本的に“走るのが苦手”で、第6世代ステップワゴンは、ホンダ「シビック」のように機敏に走れるわけではない。が、ハンドリングの特性は第5世代に比べてかなり改善されていた。

 カーブでハンドルを切ったときにアンダーステアが出にくく、思い描く走行ラインを簡単にトレースできる。思ったより曲がらずハンドルを後から切り足すことが少ないので、同乗者も揺れを少なく感じるだろう。

 また、第6世代には「アジャイルハンドリングアシスト」というホンダ独自の車両安定装置が実装された。ハンドルの切り角、切るスピード、車速などの情報を基に前後左右輪それぞれにブレーキをかけ、クルマの姿勢を良い状態に保つ――このホンダの能書き、本当だった!

 VSA(車両安定アシスト)も非常に良い働きをした。豪雨に遭遇し、大型車が跳ね上げた水柱が目測で10mくらいに達するような状況だったが、そんな道でもステップワゴンはハンドルを取られることなく爆走できた。

 ミニバンで悪天候に強いと言えば、三菱自動車のAWD(4輪駆動)「デリカD5」が思い浮かぶ。ステップワゴンは2輪駆動にもかかわらず、安定性はそれに近いものがあった。こんな特性を2輪駆動で出すのは困難であり、シャシー開発部隊を手放しで称賛したい。

 ちなみにホンダは2013年のアコードハイブリッドに、二足歩行ロボット「アシモ」のアルゴリズムを応用したVSAを採用したことがある。筆者も試乗したが、まるで次元の異なる制御ぶりに感服したものだった。

 アコードの開発陣が、アシモのエンジニア陣に手柄を渡すのを嫌がり「絶対に言いたくない」と突っ張ったため、業界はおろかホンダ社内でもほとんど知られないまま1代限りで終わったが、そういう制御の高度化への取り組みがここにきて再燃したのかもしれない。