あなたも使っているかも?
ついつい使いがちな二重表現
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

ついつい使いがちな「二重表現」16選
いきなりですが、クイズです。
次の文章、なにが間違っているでしょうか?
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ということは、私が一番最初にやるべきなのは、グランフロント大阪の貸会議室の事前予約ですかね。
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答え:「一番最初」も「事前予約」も二重表現です。
「一番」と「最」は意味が重複しています。事前予約も同じ。事後予約という日本語がないように、予約は事前にするものです。
こういった間違えがちな二重表現を、16個まとめてみました。
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1. その方法が一番ベストですね。 → その方法がベストですね。/その方法が一番良いですね。
「一番最初」や「一番最後」と同様、「一番ベスト」は意味が重複しています。
2. 各チームごとに対応してください。 → チームごとに対応してください。 /各チームで対応してください。
「各」と「ごと」は同じ意味です。
3. あとで後悔しないように頑張ろう! → 後悔しないように頑張ろう!
「後悔」はあとから(事後に)するものですよね。
4. その意見には、違和感を感じます。 → その意見には、違和感を覚えます。
「◯◯感を感じる」は重複表現です。「親近感」や「特別感」なども同じ。
5. あらかじめ準備しましょう。 → 準備しましょう。
準備はあらかじめするもの。「あらかじめ」を使うときは、後ろに付く言葉を意識しましょう。
6. すみません、頭痛が痛いです。 → すみません、頭が痛いです。
二重表現の代表例。知っている人も多いかもしれませんね。
7. 危険なリスクが高まっている。 → リスクが高まっている。/危険性が高まっている。
「危険」と「リスク」で意味が重複しています。
8. 内定が決まりました! → 内定をもらいました!/内定が出ました!
内定は「正式の発表・手続きの前に、内々には決まっていること」を意味するので、「内定が決まる」だと「決定が決まる」のようになってしまいます。
9. 製造メーカーに問い合わせます。 → メーカーに問い合わせます。
メーカーは「製造者、製造業者」の意味なので、製造メーカーは重複表現です。
10. 約10人ほど集まりました。 → 約10人集まりました。/10人ほど集まりました。
同じ意味なので、どちらかに絞りましょう。「だいたい、くらい、およそ、ほぼ」も同様です。
11. 先日、過半数を超えました。 → 先日、過半数を占めました。/先日、半数を超えました。
これも代表的な二重表現ですね。
12. まだ未定です。 → 未定です。
文字で見てもスルーしてしまいがちなので注意!
13. 第2回目は来週開催します。 → 第2回は来週開催します。/2回目は来週開催します。
「第」と「目」は同じ意味です。
14. 署名が必ず必要です。 → 署名が必要です。
強調したいなら「必須」「絶対必要」「マスト」などを使いましょう。
15. お体をご自愛ください。 → ご自愛ください。
「自愛」は「体の健康状態に気をつける」という意味なので、「お体ご自愛ください」だと「体」が重複します。
16. この書類、郵送で送ってください。 → この書類、郵送してください。/この書類、郵便で送ってください。
これも「送」がダブっているので違和感がありますね。
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いかがでしたか。意外とよく使っているものもあったかもしれません。
とはいえ、最後にひっくり返すようなことを言いますが、二重表現といっても絶対NGではないと思っています。
たとえば村上春樹さんの『若い読者のための短編小説案内』には、「まずはじめに」というチャプターがあります。通常なら「はじめに」なのでしょうし、厳密には二重表現なので編集者や校閲者は指摘したのではないかと想像します。
ただ、これはこれで味が出ている気もしますよね。「言葉の響きや口語的なニュアンスを優先して、二重表現でもあえて使う」という選択肢もあるのではないでしょうか。
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。
※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子 錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。