
国産初の新型コロナウイルス感染症治療薬を開発した塩野義製薬が、日本たばこ産業(JT)医薬事業と同社子会社の鳥居薬品を総額約1600億円で買収すると発表した。田辺三菱製薬、住友ファーマ、塩野義を含めた売上高数千億円レベルの製薬業界の第2集団で「プチ業界再編」が続く。最新序列はどうなったのか?『激動!決算2025』の本稿では、製薬業界の最新序列を2025年3月期の決算などを基に明らかにしていく。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
鳥居薬品の親会社は二転三転
「米メルク→アサヒ→JT→塩野義」
大阪・道修町の老舗、塩野義製薬は、日本たばこ産業(JT)の医薬事業と傘下の鳥居薬品(JTが54.78%出資)を買収すると発表した。ディールの詳細は、塩野義による鳥居へのTOB(株式公開買い付け)に加え、JT本体からの医薬事業の譲受、米国のJTグループ会社の譲受といったやや複雑な形だ。買収総額は約1600億円規模となる見込みである。
JTは2010年代、製薬業界首位の武田薬品工業の研究開発トップだった人物を招聘(しょうへい)するほど医薬事業に力を入れていた。しかし、今回の売却で医薬事業からは完全撤退することとなる。また鳥居は1980年代以降、米メルク、アサヒビール、JT、そして今回の塩野義と、親会社が次々と変わる流転の運命が続く。
感染症領域に強みを持つ塩野義は中期経営計画で26年3月期の売上高5500億円(25年3月期の実績は4382億円)を目標に掲げていた。目標と実績とのギャップを埋める策として、以前からM&A(企業の合併・買収)を匂わせていた。
製薬業界では今年、三菱ケミカルグループが田辺三菱製薬(23年度売上高で業界9位)を米投資ファンドのベインキャピタルへ売却すると発表したほか、住友ファーマ(同11位)がアジア事業を丸紅に売却すると発表。売上高数千億円レベルの“業界第2集団”で「プチ業界再編」が過熱している。
その波に乗った形の塩野義(同10位)は今回の買収で業界何位に浮上するのか。次ページでは最新の24年度決算を基に田辺三菱、住友ファーマ、武田薬品、アステラス製薬、第一三共、中外製薬、エーザイなど、大手製薬会社の最新順位を解説するほか、トランプ関税の影響などを踏まえた25年度の順位も占う。