
ホンダ「ステップワゴン」が販売で苦戦している。初登場は1996年。モノコックボディ、前輪駆動ベースでミニバン市場に殴り込みをかけたところ大ヒット。まさにトレンドセッターであった。それが今や見る影もなく、トヨタや日産の競合モデルに水を開けられている。なぜなのか。試乗記も交えて考察する。【前後編の前編】(ジャーナリスト 井元康一郎)
ホンダ「ステップワゴン」
なぜ独り負けなのか
なぜホンダのステップワゴン(現行型、第6世代)は4.7m級ミニバンカテゴリーにおいて、トヨタ自動車の「ノア/ヴォクシー」や日産自動車「セレナ」に販売台数で圧倒されているのか。いったい何が原因なのか。
まず、筆者が実際にステップワゴンを使い倒してみた総評を述べよう。居住感、荷室の使いやすさ、経済性、走行安定性などミニバンに求められる性能の多くは高レベルで、少なくともハードウェア面の総合力で競合に後れがあるようには感じられなかった。
ステップワゴンの良い点を5つに絞ると、下記が挙げられる。
(1)3列目シートの床下収納機構が生む広大な荷室空間
(2)2、3列目からの眺望の良さ
(3)旧型からの流用品ながら有意に向上した実走燃費
(4)悪天候でも恐れず走れる高い走行安定性
(5)クラストップの動力性能
特に(1)と(4)は競合モデルにない特徴と言える。眺望の良さは1列目より2列目、2列目より3列目のアイポイントを高く取るシアターレイアウト設計と、横方向の窓の開口長が大きいことの合わせ技によるもので、ちょっとした観光バス気分を味わうことができる。
一方、ネガティブファクターは下記のとおり。
(1)旧型からなぜか後退した乗り心地の滑らかさ
(2)旧型でとても便利だったバックドアの横開き機能が廃止された
(3)内外装の質感の出し方がいささか下手
(4)運転席まわりの小物収納が減った
(5)シートヒーターをオプションでも装備できないなど謎仕様が多い
筆者は旧型についてもハイブリッド、エンジン車の両方を長距離試乗しているが、それらとの対比で最も残念だったのは(2)、次いで(1)だ。(2)については一般ユーザーでも残念がっている人が多いことだろう。
が、これらのネガティブファクターも長所との相殺を考えれば、第5世代、第6世代と続けて4.7m級ミニバン市場で劣勢を強いられている理由としては弱い。真の理由は何か。