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スティグリッツ教授の真説・グローバル経済

米住宅市場回復に向けた処方箋はローンの減額

ジョセフ・E・スティグリッツ [Joseph E.Stiglitz]
【第8回】 2010年10月19日
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かつての証券化モデルはまったく機能していない。だが、オバマ政権もFRBも真剣に現実を見据えていない。

ジョセフ・E・スティグリッツ
(Joseph E. Stiglitz)
2001年ノーベル経済学賞受賞。1943年米国インディアナ州生まれ。イェール大学教授、スタンフォード大学教授、クリントン元大統領の経済諮問委員会委員長、世界銀行上級副総裁兼チーフエコノミスト等を歴任。現在はコロンビア大学教授。

 市場経済の機能不全を表す確かな証拠が失業率の高止まりである。今日のアメリカでは、フルタイムの仕事を望んでいる労働者の6人に1人がそうした仕事を見つけられずにいる。巨大なニーズがあるにもかかわらず、膨大な資源が使われていないのが今のアメリカ経済なのである。

 住宅市場はアメリカのもう一つの矛盾である。住む家のない人が何十万人もいる(2009年では、少なくとも一晩、シェルターで過ごしたアメリカ人が150万人以上に上る)一方で、何十万軒もの住宅が空き家のままになっている。

 差し押さえ率はむしろ上昇している。家を失ったアメリカ人の数が08年は200万人、09年は280万人に達するが、10年はその数がさらに増えると予想される。アメリカの金融市場はまともに機能していなかった。きちんと機能している「合理的な」市場なら、返済する能力や意思のない者にカネを貸したりはしない。それなのに、これらの市場を動かしていた人びとは、あたかも金融の天才であるかのごとく、巨額の報酬を得ていたのである。

 これらの話はどれも皆、目新しくはない。新しい情報は、住宅市場や住宅ローン債権市場を再び機能させるためのオバマ政権の措置がほとんど成功していないことを、この政権が遅まきながらしぶしぶ認めたことだ。

 奇妙なことに、政府は予測可能な将来にわたって住宅市場を支え続ける必要があるというコンセンサスが、左右どちらの陣営でも高まってきている。この姿勢は奇怪であり、考えようによっては危険である。

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スティグリッツ教授の真説・グローバル経済

米国をはじめとする各国の経済政策、気候変動、金融規制等々、世界の最重要テーマを、ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツ教授が明快に解き明かす。

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