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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

「労働模範」として地元市民に愛されている
成都イトーヨーカ堂への破壊行動は看過できない

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第24回】 2010年10月21日
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 16日、田母神俊雄前航空幕僚長が会長を務める市民団体などの主催で、東京都内で抗議集会が行われた。「中国大使館を包囲」と呼びかけていたので、それが中国国内に伝わると、その対抗意識からか、成都など内陸部のいくつかの都市で大学生がメインとなる大規模な抗議デモが行われた。日中両国で市民レベルの抗議合戦となってしまった状態だ。中でも、成都にあるイトーヨーカ堂は店舗のガラスが壊された。そのことを知って、筆者も心痛を禁じ得なかった。

 イトーヨーカ堂は1996年末、日本の小売業者としていち早く中国の内陸部にある成都に進出し、現在は97年に成都市中心街にオープンした1号店(春熙店)、2003年に開店した2号店(双楠店)、07年にできた3号店(錦華店)、09年11月に営業を開始した4号店(建設路店)という4店舗を展開している。中国の内陸部で成功を収めた日系企業として知られる。2号店の双楠店は、国内外にある約190店のイトーヨーカ堂のなかで、最も利益をあげているといわれている。

 実は、ビジネス的に成功しているだけではなく、成都イトーヨーカ堂は地元に溶けこむために企業市民活動も非常に積極的にしてきた。私が以前報道した実例をここでもう一度取り上げたい。

 2005年6月中旬、白血病治療のために成都市の病院に入院していた8歳の少女が、読み書きのできない養父に代わって、カルテに「自ら治療を放棄することを決めた」と書いて病院を引き上げ、郊外の農村に戻った。

 少女は生まれてすぐ捨てられた。貧しい農民の養父が草むらから彼女を拾って男手で懸命に育ててきた。少女の病気治療のために、養父は集めたすべての金を使い果たしたが、それでも足りない。少女の命を救うために、養父はぼろ家を売りに出した。それを知った少女は、養父の生活を心配し、病気治療を自ら放棄した。

 病院を引き上げた少女は、養父に二つだけお願いをした。「新しい洋服を買ってほしい。写真館に連れて行ってもらいきれいな写真を1枚撮りたい。お父さんはこの写真を見ればあたしのことを思い出せるでしょう」。死を意識した8歳の少女は自ら葬式の準備を進めた。

 この話を知った成都イトーヨーカ堂は、直ちに行動を起こした。「成都市貧困児童白血病救援基金」に会社として少女を支援するための寄付金約3万人民元を出したばかりでなく、7月上旬の土日を利用して、成都にある双楠店の催事場と1号店の春熙店で大型ステージを用意し、チャリティーオークションを含めた一般市民への募金協力イベントを行い、約1万7000人民元の募金を集めた。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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