新聞を殺した元凶――。クレッグズ・リストといえば、この一言で説明されることが多い。
同社は、ユーザー同士の「売ります、買います」広告や、企業の人材募集のクラシファイド・アド(3行広告)、さらに住宅賃貸情報などを扱うサイト。日本での知名度は低いが、アメリカに住んでいる人ならば、愛用者はかなり多いはずである。筆者も引越しの際にはさんざんお世話になった。
このクレッグズ・リスト、実はアメリカのトラフィック・ランキングでは11位、世界でも47位に入る人気サイトである(アレクサ調べ)。もっと驚くのは、ランキングで2つ上、9位のイーベイ(オークション・サイト)の従業員は1万5000人もいるのに、クレッグズ・リストはたった25人で運営されている点だ。
両者ともに、コンテンツはすべてユーザーの投稿によるという、つまり同じUGM(ユーザー・ジェネレイティッド・メディア)なのだが、この違いは甚だしい。その差は、クレッグズ・リストが次の2つの点で通常のUGMサイトと一線を画しているからである。
ひとつは、そこに掲載されている情報。コミュニティ仲間のおしゃべりや写真投稿、オークション・サイトなど娯楽のためのコンテンツとは違って、クレッグズ・リストに掲載されるのは、前述したとおり、人材募集や「売ります、買います」広告など、人々が日常生活で必要とする情報が中心である点だ。
人材募集は毎月200万件が掲載されている。それをユーザーが掲載し、ユーザーが利用する。しかも大半が無料だ。新聞を殺したと言われるのは、まさにこのためである。これまでアメリカの新聞が依存してきた地元の3行広告からの広告収入が、今やすっかりクレッグズ・リストに奪われてしまったのだ。
クレッグズ・リストが課金するのは、一部地域の企業による人材募集広告(1件あたり25~75ドル、地域によって異なる)と、業者によるニューヨークの空き家情報掲載(1件あたり10ドル)のみ。それ以外はすべて掲載無料な上、利用もただ。オンライン人材募集サイトとして知られるモンスターが、掲載1件あたり475ドルも徴収しているのとは大違いだ。新聞の3行広告のような文字数の制限もない。
もうひとつの違いは、クレッグズ・リストのサイト運営者が利益を最大化することにあまり重きを置かず、「人々の役に立つこと」を優先させている点である。
クレッグズ・リストでは、不動産広告にせよ売買広告にせよ、そこに並んでいるのは、テキスト・ベースの日付順のリストだけ。いかにも人手のかからないシンプルなサイト・デザインもさることながら、余計な情報も派手な広告もない。そのためアップロードも速い。謳い文句に興味を持てば、リンクをクリックしてさらに詳しい内容や写真にアクセスすればいい。このいかにも実用主義的なところが受けている理由でもある。