情報を入手する手段としてフェイスブックやグーグルを活用する人が増えた。GAFAMに代表されるテックジャイアントは、大手ニュースメディアを買収しエンタメ業界を牛耳っているが、その真の目的の一つは、個人のプライバシー情報の収集だという。テック企業による情報独占の行き着く先は恐るべき監視社会だということに、私たちはもっと危機感を持つべきなのだ。本稿は、ジョエル・コトキン著、寺下滝郎訳『新しい封建制がやってくる』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです。
歴史あるニュース出版業界は
いまやグーグルの言いなりに
印刷出版業とそれを支配してきた企業が長期にわたる、おそらく回復不可能な衰退に見舞われるなか、テックオリガルヒの力は強まっている。2001年から2017年までに出版業界(書籍、新聞、雑誌)では29万人の雇用が失われた。40%もの減少である。今日どの新聞も雑誌もウェブサイトを開設しているが、オンライン広告の伸びがフェイスブックとグーグルに支配されているため、新規または小規模の出版物が生き残るのは至難の業となっている。
2018年にはグーグルだけで47億ドルもの利益をニュース出版会社から得ているが、ニュース出版業界は縮小の一途をたどっている。『シアトル・タイムズ』社長のアラン・フィスコは、「全世界のグーグルやフェイスブックの発展ぶりやその収益額に目が行きがちですが、われわれはその陰でテーブルから落ちたパンくずを拾っているのです」と語っている。
テックオリガルヒは、既存メディアに壊滅的な打撃を与える一方で、それでも生き延びている老舗メディアを買収する手段も持っている。
2010年以降、テック業界の大物とその親族は、『ニュー・リパブリック』『ワシントン・ポスト』『アトランティック』、さらに長期低迷中の『タイム』を1億9000万ドルで買収している。中国では、定評ある『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が国内最大手のオンライン小売業者アリババに買収された。
出版・刊行物の獲得は、テックオリガルヒの虚栄心をくすぐり、文芸やジャーナリズムの世界への参入を後押しする。こうして出版・刊行物を買収すれば、さらに優位に立てる。資金コストをあまり気にせずに、贅沢にコンテンツを制作することができるようになるからである。