人間は、脳あってこその存在。人の行動、思考、感情、性格にみられる違いの数々は、すべて脳が決めているのです。「心の個性」それはすなわち「脳の個性」。私たちが日常で何気なく行なっていることはもちろん、「なぜだろう?」と思っている行動の中にも「脳」が大きく絡んでいることがあります。「脳」を知ることは、あなたの中にある「なぜ?」を知ることにもなるのです。この連載では、脳のトリビアともいえる意外な脳の姿を紹介していきます。

夢は記憶が
変形したもの

 「夢ははかない」とはよくいったものです。この言葉は、夢(願望)は叶わないという意味でいうこともありますが、もとは眠るときに見る夢が、目が覚めると手のひらから滑り落ちていく砂のように消えていくことを指しています。

 また、完全には消滅しなくても、夢の一部しか思い出せないケースが少なくありません。それが甘い夢だったときは、消えていった夢を追いたくもなります。しかし、残念ながら二度と帰ってはこないのです。

 では、その夢は現実とはまったく無関係なのかというと、それは考えにくいことです。夢は現実とどこかで結びついているし、事実、夢に登場する人物や風景は自分自身や知人だったり、いつか眺めた光景だったりします。

 脳の科学では、夢は脳に刻まれた記憶をまぜ合わせて合成し、また想像を加えたものだとされています。現実の世界が脳の回路を通って記憶され、その記憶が変形して夢として甦るのです。

 また、思わず目が覚めてしまうような怖い夢もあります。そこには恐怖、不安、願望などがあふれているが、それは現実の恐怖や不安や願望を何らかの形で反映しているのです。

行動しなければ
記憶に結びつかない?

 夢が現実を反映しているとしても、なぜ、夢は記憶に残らないのでしょうか。もし夢が記憶の再生であれば、確実に記憶に刻まれてもよさそうなものですよね。しかし、人間は夢のほんの一部しか覚えていません。どうしてなのでしょうか。