
特殊詐欺組織のアジトがあるカンボジアの通称「サギ村」では、日本から送られた出稼ぎの女性が男たちの相手をしていた──。2022年から2023年にかけて日本を震撼させた「ルフィ広域強盗事件」の司令塔はフィリピンを拠点としていたが、「ルフィの親玉」たちとつながりを持つ人物が、カンボジアの日本人売春業界でも暗躍しているという。本稿は、週刊SPA!編集部 国際犯罪取材班『海外売春-女たちの選択-』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。
カンボジアの通称「サギ村」は
特殊詐欺組織のアジト
「実はカンボジアに女の子の派遣を頼まれて、どんなところか視察に行ったことがあるんです。そこが……あぁ、これや、見てください。写真も撮ったんで。ここはなんだと思います?」
K(編集部注/取材班が大阪で接触した事情通の人物)はスマホを繰ると、指を荒々しく動かし、画面を見せた。そこに写っていたのは、ホテルの一室のようなところから窓の外を撮影したものだった。3~4階建ての建物が2棟立っていて、この奥はどうやら別の建物が建設中だった。何の変哲もない写真のようだが、よく見ると全体が塀に囲まれていた。刑務所のようにも見える。
「実はこれ、特殊詐欺やってる犯罪組織のアジトなんです。ここに日本人、韓国人、中国人が1000人ほど集められて、ここからそれぞれの国に詐欺の電話をかけまくる。タイやフィリピンで活動できなくなった詐欺グループの連中がここに続々と集まっている。ここの規模感からして、村やね。最近では“サギ村”って言われているみたいやし。しかもこんなのが1つじゃなくて、似たような“村”がいくつもできてます。
ホンマかどうかしらんけど、この村が稼ぎ出す金額が“ウン千億”っていう話です。外にはガードマンもいるから、カタギの人間は中に入れない。現地のカンボジアの人はなにかの会社だと思ってるみたいやけど、オフィス内はパソコンがずらっと並んでて、iPhoneの古い型……8とか9とかがいくつもテーブルに転がってて、あちこちで詐欺の電話をかけまくってる」
スマホを繰る手を休めずにKは続ける。体育館や食堂があり、詐欺グループはそこで集団生活しながら“仕事”に励んでいるのだという。
カンボジア政府を抱き込んだ
詐欺師だらけの治外法権
「オレオレ詐欺はもう過去の話。今は株の投資詐欺が主流て言うてましたよ。記者さんのスマホにもわけわからんメールが送られてきません?変な日本語の。あれもこのへんから送られとるみたいです」
実際記者にも連日えたいのしれないメールが届いていた。それが届かない日は1日としてなく、もはや気にも留めなくなっていたのだが。