
元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルに関して、フジテレビと親会社が設置した第三者委員会は3月31日、調査報告書を公表した。27日には経営体制の大幅な見直しを発表したものの、約40年も権力を握り続けた日枝久氏が辞任の理由を語らないことに視聴者やスポンサーからは疑問の声が上がっている。広告という収益源が断たれたフジテレビの業績は最終赤字に転落する見通しだ。最新の決算資料を中心にポイントを解説する。(ダイヤモンド・ライフ編集部)
中居正広氏引退、日枝久氏が辞任も...
「ようやく」というべきか、「遅きに失した」というべきか――。
元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルを発端とした一連の問題を受けて、フジテレビと親会社のフジ・メディア・ホールディングス(HD)は3月27日、経営体制の大幅な見直しを発表した。
約40年もの長きにわたって権力を握り続けた日枝久氏は、両社の取締役相談役を務めていたが、今回で退任。フジサンケイグループの代表も辞任することが明らかになった。
日枝氏は、時に人事面では独善的な判断もあったとされる。その影響力は絶大で、“老害”とも批判されてきた。公共性・公益性の高い放送事業、株式公開している企業で、何十年も同一人物がトップに君臨し続けていること自体が、問題視されても仕方ない。
グループ上層部の顔ぶれは、どのように見直されるのか。まずは、下の表を見てほしい。一連の問題が起きる前のフジ・メディア・HDの取締役一覧だ。全17人中、実に11人が70歳を超えている。80歳以上も3人いる。男性が15人、女性は2人いるがそのうち1人は総務省出身の社外取締役だ。

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高齢の役員が多くを占める硬直化した経営体制に対して、不満を持つ社員は以前から多かった。そこに降りかかったのが、一連のコンプライアンス違反、コーポレートガバナンス欠如の疑惑だ。
きっかけは、昨年末の週刊文春による報道だった。年明け1月14日にはフジ・メディア・HD株を約7%保有し、アクティビスト(物言う株主)として知られる米ファンドのダルトン・インベストメンツが、トラブルの真相解明のため第三者委員会の設置を要求した。
1月17日、同社の港浩一社長(当時)が慌てて緊急会見を行ったものの、参加メディアを限定した閉鎖的で報道の公益性・公平性が欠落した会見だった。こうしたフジテレビの企業姿勢に、消費者からは批判や怒りの声が相次ぐことに。トヨタ自動車をはじめとするスポンサーがフジテレビへのCMを相次いで差し止めた。
スポンサー離れは加速し、8チャンネルではACジャパンのCMばかりが流れる異様な光景となる。そして1月27日、港社長と嘉納修治会長(当時)が辞任。今度は全てのメディアを受け入れた結果、日付をまたぐ10時間超の異例の会見となった。
新生フジ・メディア・HDを率いる顔ぶれは一体どうなっているのか。また、広告という収益源を断たれたフジテレビの業績は、どこまで悪化しているのか? 最新の決算資料を中心にひも解いていく。フジテレビは最終赤字に転落する見通しだ(詳細は後述)。
経営体制の刷新はまだまだ序の口。フジテレビが乗り越えなければならない「3つの壁」についても指摘したい。